BtoBセールスの原理原則8 「A. 準備活動(Preparation)」-「A.3 顧客理解」

諺の「段取り八分(はちぶ)」とは、仕事に取りかかる下準備が完全にできていれば、仕事の8割は終わったようなものという意味です。準備が大切だという教えです。逆に、「段取り(事前準備)がされていなければ、仕事の80%以上は失敗する」ことは、経験から納得感があります。営業活動が始まった場合、相手がいるので、全てを自分たちでコントロールは出来ませんが、準備段階は自社内での活動ですから、自分たちでコントロールができます。「A.3顧客理解」の下位のレベル3は、「A3.1 顧客の事業調査」「A3.2 顧客の市場環境の分析」「A3.3顧客との取引状況の確認」に分けました。

・A3.1 顧客の業績調査 : 顧客の業績や業務内容や組織を知るために、インターネットが発達していないときには、お客様を訪問して「会社案内や商品カタログ」などをもらっていました。「四季報」や有料で企業情報を提供しているサイトで調べたりもしていました。今では、ほとんどの会社はホームページを持っています。インターネットでも多くの情報が収集できます。会社案内を作っていない会社も多いです。私は新規のお客様の場合は、まずお客様のホームページをチェックして情報を収集します。主に見るところは、①「企業理念」と「社長のご挨拶」です。企業の目指すものと方向性を確認します。知り合いの営業パーソンは、「それが載っていない企業は、何を考えているのかわからないで怖い」と言っていました。②「事業概要、沿革、組織」で企業の事業内容や規模を確認します。③「業績、決算報告書」で、売上額、伸び率、抱えている課題や今後の投資分野を推測します。企業情報の収集は本当に楽な時代になりました。企業の財務状況の指標は色々とありますが、基本的には、①売上高、②本業利益ともいわれる金額、営業利益=売上高-売上原価―販売費および一般管理費、③黒字か赤字が、伸びているのか減っているのか3つの指標を年度ごとに比較した推移で見ていけばよいと思います。

・A3.2 顧客の市場環境の分析 : 自社を起点として市場を分析するフレームワークに3C分析があります。3C分析とは、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの「C」について分析する方法です。Customerの中に「市場」を含めることもありますが、個人的にはCustomerは、「自社の対象となるお客様」に限定してみたほうが良いと思っています。通常の3C分析は、自社を起点としての3Cですから、自社が抱える問題などが分析されますが、この3C分析では、お客様の問題や課題は抽出されません。お客様を起点にして分析したときには、お客様にもお客様(Customers Customer)があり、お客様にも競合(Customers Competitor)が存在しています。ですから、Customer(顧客)、Customers Customer (お客様のお客様)、 Customers Competitor (お客様の競合)の3C分析になります。そして外部環境の分析のフレームワークとしてPEST分析がよく使われます。PESTとはPolitics(政治)Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの外部環境の頭文字です。この4つの視点で分析すればよいと思います。
お客様の課題は、自社起点の3C分析ではなく、お客様起点の3C分析の中に存在します。ですから、お客様の問題・課題を考える時には、お客様起点の3Cで見る必要があります。ただし、この分析は、お客様訪問前の分析ですので仮説の分析です。分析の内容は、「お客様」と「お客様の競合」との「強みと弱み、特徴」を「お客様のお客様」の「業種や特徴、課題、取引先への期待」と、外枠で全体の外部環境のPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)について整理します。その全体の関係性の中に、自社のお客様の問題・課題が見えてきます。ただしお客様起点の3C分析は、あくまでも仮説ですので、その仮説が正しいかどうかは、お客様に確認することが、検証作業になります。そこから「調査、提案活動」でお客様の問題・課題に対して自社で対応可能な解決策を検討していきます。

・A3.3顧客との取引状況の確認 : コロナの影響で、インサイドセールスに取り組む企業が増えました。一般的なやり方を見ると①メールやホームページで、ウェビナーのセミナーを案内する。②申し込む人の情報を登録してもらう。③後日、電話で営業する。の流れです。お客様に伺うと「見込み客になる確率が、展示会やセミナーと比べて低くなっている」「新規顧客の開拓が難しくなっている」との話を聞きます。申し込む立場で考えると、当初は参考程度に申し込んでいましたが、ウェビナーの数が増えたので、最近は申し込むことが少なくなりました。費用対効果でインサイドセールスを見直す企業もでてきています。見込み客発掘は営業活動の永遠の課題です、何らかの糸口のあるお客様へのアプローチの方が、商談につながる可能性が高いです。対象のお客様の糸口として、①現在自社と取引がある企業、②過去に取引があった企業、③自社がお客の立場の企業、④自社がお客様の企業から紹介をしてもらう。そのような関係のある企業へのアプローチが効率的だと思います。具体的には、①は、大きな企業では多くの部門があるため、1社のお客様に、何人もの営業パーソンが連携もないまま、個別にアプローチしています。取引の実績がある部門があれば、そこから広げたほうが効率的です。②今は取引関係が無いが、過去は取引のあったお客様に対しては、アプローチしやすいと思います。③逆に、自社がお客様の立場で、取引をしている企業に対しては、自社の購買部門などから、取引関係がある部門の人を紹介してもらいます。互恵関係と言われる持ちつ持たれつの関係になります。私の経験でも、大企業は、複数社と相互の取引関係があるため一社購買にせず、何社かにシェアを分散していました。こうした取引関係は、日本企業では結構あります。④は、自社が取引関係のあるお客様に、取引先企業への紹介を依頼します。紹介販売の1つです。いずれも泥臭い営業方法ですが、闇雲にアプローチするよりは効果があります。全社全部門が、営業マインドを持って取り組みます。

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