BtoBセールスの原理原則17 「D.提案活動(Proposal)」-「D3.提案後の活動」

「D.提案活動(Proposal)」は、お客様にヒアリングした結果をもとに、提案の作成と実施をするフェーズです。「D.提案活動(Proposal)」の下位のレベル2は「D1.提案の立案」と「D2. 提案の実施」と「D3.提案後の活動」の3つに分けました。「D3.提案後の活動」の下位のレベル3は、「D3.1 意向の確認」と「D3.2 提案の説得」と「D3.3 検討を促す手法」の3つに分けました。主な提案方法を3種類上げました。ケースバイケースでの使用になります。

・D3.1 意向の確認 : ①提案前に確認することは、なぜ提案を聞こうと思ったかの理由。例えば、今後の検討の情報収集のため。検討する前の商品の性能、機能の確認のため。他社の商品と比較のため。を行います。営業パーソンの説明通りのものか実証のため。契約の社内の合意を得るため。②提案後に確認することは、検討のためなら検討することが出来るかの確認。実証のためなら納得できたかの確認。契約のためなら契約に進めるかの確認。を行います。③提案後の留意点は、例えば、提案後にすぐに結論が出ない場合、遅くても2~3日後には、顧客の意向を確認します。提案に問題がないか確認し、問題がある場合は、すぐに対応を検討します。間をあけると、知らないうちに競合が参加していたり、商談が別の方向に進んでいたりすることがあります。
提案内容の確認の時にお客様がとる主な2つの否定的な態度があります。対応方法は以下のようになります。①誤解。提案の内容が正しく理解されなかったため起きます。誤解の対応方法は、顧客の誤解を受容する。→顧客の考えを確認する→証拠を提示する。→具体的なデータや事例を示す。→誤解が解けたか確認する 。になります。②不満。商品の性能、機能などに満足していないため起きます。不満の対応方法は、顧客の不満を受容する。→不満の理由を確認する。→顧客の「ありたい姿」を確認する。→解決したい課題に焦点を当てる。→課題が解決できることを説明する。→不満が解消されたか確認する。になります。

D3.2 提案の説得 : 説得力のある交渉を行うためには、整理された説明の技術が必要です。自分の言いたいことが、相手にわかりやすく伝わり、説得力を持って主張できなければ、望んでいる成果は得られません。論理的な説得方法として、AREA(エリア)の法則と呼ばれているものがあります。AREAの法則とは、Assertion(主張)、Reasoning(理由)、Evidence(証拠)、Assertion(主張)の頭文字をとった、説明の構成のフレームワークです。AREAの法則(説得の流れ)は、①Assertion(主張)。今回の目的や提案内容を最初に説明します。聞くほうも最初の段階で何についての話か理解できます。例えば、「今回ご提案させていただいたのは、○○がいかに御社の生産性の向上業務の改善にお役に立てるかということです」。②Reasoning (理由) 。主張したことに対しての、理由と根拠を説明します。例えば、「というのは(なぜなら)今回の機械は、従来の機械と比べ操作に必要な人数は、約30%減らすことが可能です」。③ Evidence (証拠)。理由に対して、具体的事例やデータなどの根拠を示します。例えば、「その証拠に、従来5台お使いになっていた企業は、3台に台数を減らしましたが、生産性は、従来と変わらないまま、操作する人員が半分で可能になりました」。④ Assertion(主張)。話の締めとして、再度もう一度、提案の趣旨などを説明して結論とします。例えば、「以上のご説明で、今回ご提案させていただいている機械が、御社の生産性の向上と業務の効率化にお役にたてることをご理解いただけたと思います」。AREAの法則に沿って、商品を、顧客に分かりやすく説得できるように、あらかじめ頭の中でシナリオを作成しておきます。

・D3.3 検討を促す手法 : 効果的に相手を説得する手法として、代表的な説得の4大手法があります。①フット・イン・ザ・テクニック。段階的要請法とも呼ばれています。最初に小さな、簡単な要請から初めて、徐々に要請を大きくする」方法です。街で「被災地への署名を依頼して、署名した人に義捐金を要請などは、このテクニックです。営業活動では、簡単な要求に答えていただいた後に、本来の目的を要請する。などあります。②ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック。譲歩的依頼法とも呼ばれています。最初に断られることを想定した大きな要請をした後に、相手が受け入れられそうな小さな要求をして、承諾を得る方法です。人の潜在意識は「人の頼み事はできるだけこたえてあげたい」という気持ちがあります。最初に断るような要請をした後、相手の罪悪感の気持ちを利用して、いかにもこちらが譲歩したように小さな要求をします。営業活動では、最初高額な商品を進めた後に、本来進めたい手頃な商品を進めるなどのやり方です。③ロー・ボール・テクニック。最初に、いかにもお得な、低い条件で、相手の承諾をとった後に、改めて追加の条件を説明します。要請したい目的自体は変化しないが、条件が変化します。格安の商品を進めて決めた後に、必要なオプションや費用を説明する。相手にとって不利な条件を隠すなど、あとからだまされたと感じることがあります。④イエスセット。「YES話法」とも呼ばれています。相手がイエスと言いやすい簡単な質問を続けていると、肝心の要請に対してもイエスと回答しやすくなる心理反応を利用します。例えば、製品の不良率を下げたいと思っている→Yes。製品の製造コストを下げたいと思っている→Yes。製造の納期は守りたいと考えている→Yes。製造機械の見直しが必要だと考えている→Yes。であるなら、新しい機械の導入を検討したほうが良いのではないでしょうか?
個人的には、こうした手法を駆使して、お客様を説得するのは好きではありません。きちんとお客様の「問題・課題」を把握して「それを発生しさせている真因を突き止め」それに対して「効果のある提案をする」。そして納得していただくのがベストと考えています。しかし、全ての営業パーソンも逆の立場では、お客様(購入者)の立場にもなります。世の中は、意外なほどこうした手法(テクニック)が使われています。そのため冷静な判断が妨げられることもあります。1購買者として、こうした手法は理解しておいた方が良いと考えています。

アメリカの心理学者ニール・ラッカムは、12年間で35000人以上のトープ営業パーソンを分析した結果、説得が上手な営業パーソンの売れるプロセスを2つ発見しました。①受注に結び付いている商談では、終始、お客様が話している。これは、いくつか心理的反応が起こっていると考えられます。実績の良い営業パーソンは、顧客が2倍しゃべり、実績が悪い営業パーソンは、顧客の2倍しゃべるというデータもあります。人間は自分が口に出して話したことを、自分の耳で聞いた時に初めてそれを理解します。この人間の脳の機能を「オート・クライン」(ミシガン大学カール・E・ワイク氏提唱)と言います。人は自分の頭の中にある情報を言葉に出して、自分の耳で聞く作業を経ないと自分の気持ちを認識できないという理論です。ですから大事なのは、相手に話させることです。そのための質問が重要です。話すことによって頭の中が整理されます。話をしているのは、お客様なのですから、自分の言ったことに責任を取ろうとし、自分の決定は正しいと考えます。営業パーソンは、お客様が話しやすい雰囲気作りをします。相手に行動や言葉や気持ちを合わせる「同調」を行う方法もあります。声の調子や大きさを同じにしたり、動作を合わせたりします。②営業マンは商品の特徴を説明するのではなく、その商品を使った時に得られる利益や満足感について説明します。例えば、ワゴン車のCMでは、性能や特徴でなく、その車を使って家族でキャンプに行った時の楽しさや家族の幸せな思い出作りを訴えています。商品を使うことによって得られる利益や満足感を説明することにより、お購入後の具体的なイメージを思い浮かべられるようにしています。お客様が求めている真の理由や望みや夢は何かを考えます。売れる営業パーソンの二つの傾向の要点をまとめると、「お客様にしゃべらす。」と「お客様の夢が実現することを説明する。」になります。

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