BtoBセールスの原理原則16 「D.提案活動(Proposal)」-「D2. 提案の実施」

「D.提案活動(Proposal)」は、お客様にヒアリングした結果をもとに、提案の作成と実施のフェーズです。「D.提案活動(Proposal)」の下位のレベル2は「D1.提案の立案」と「D2. 提案の実施」と「D3.提案後の活動」の3つに分けました。「D2. 提案の実施」の下位のレベル3は、「D2.1 提案書による提案」と「D2.2 プレゼンによる提案」と「D2.3 デモンストレーションによる提案」の3つに分けました。主な提案方法を3種類あげました。状況に応じて使い分けます。

・D2.1 提案書による提案 : 提案書の標準的なひな型を作成しておくと、提案を考える時の助けになります。また、他の営業パーソンが作成した提案書を共有ファイルなどに保管し、全ての営業パーソンが、閲覧でき再利用可能にしておけば、提案書作成時間の短縮にもつながり、提案書の質も上がります。標準的な提案フォームに沿ってシナリオを検討します。提案書のひな型の一例を挙げます。①表紙とタイトル。タイトルは、インパクトがあり、提案内容が分かりやすいものにします。ありたい姿の実現がイメージできるような表現にします。「DX時代の事業拡大のため。××の課題解決の○○のご提案」などです。他に、顧客名、日付、自社名、営業パーソンの名前を書きます。②挨拶文・目次。枚数が多い場合は、挨拶文と目次を付けます。挨拶文で、お礼と、提案の趣旨を説明します。③お客様の現状。調べた結果を具体的な商品や数字を入れて表現します。現在のお客様の状況を分かりやすく表現します。④現状の課題。お客様と共有した課題を表現します。市場動向、業界動向なども含む場合もあります。現状(予測)と「ありたい姿」とのギャップを表現します。課題は、出来るだけ顧客の生の声を書きます。データで表現できるものは、グラフや表にします。⑤課題への対策。問題・課題解決のための具体的な対策を提案します。提案は、一件だと選択の余地がない状態で、お客様に決断を求めているため、心理的プレッシャーが生じます。できれば、推奨案とは別に、他の案も併記すると、お客様が検討して選択することができ、押しつけられたのではなく、お客様が自身で決めたという心理が生まれます。⑥現状との比較、競合との比較。性能比較、価格比較 (数値で表現)。⑦改善効果。導入した時の具体的な効果を表します。費用対効果(効果試算・量的効果・質的効果)などを表します。⑦提案のまとめ。実現できる「ありたい姿と今後の計画を表現します。そして、検討、採用のお願いを表します。⑧補足説明。具体的な性能、商品構成。詳細見積り、経費試算表。導入スケジュール。懸念されそうなことがあれば、補足で説明します。

・D2.2 プレゼンによる提案 : プレゼンの基本的な構成は、①序論。目的を明確に伝える。テーマの重要性を認識させる。テーマの最低限の知識を提供する。②本論1,2,3。論理に矛盾がないようにする。③懸念事項の解消。事前に想定される懸念事項を表して解消する。④結論。本論の内容を簡潔にまとめる。説明時間の配分は、序論」2割、「本論」「懸念の解消」7割、「結論」1割ぐらいの配分です。プレゼンテーションの標準的な構成は、①序論。(初めの)お礼と、あいさつ。これからの進め方。今回のプレゼンの前提や背景。お客様の課題。お客様のありたい姿。今回のプレゼンのテーマ。提案内容の概要を3点にまとめる。次に進める言葉。②本論1,2,3。具体的な課題の提示。課題に対する対策。生み出される効果の説明。裏付け。次に進める言葉になります。本論は3点説明します。③懸念事項(不要の場合は除きます)。良い話ばかりだと、疑念を感じるお客様もいますので、事前に、あまりよくない話もした方が、安心される人もいます。想定されるお客様の懸念について取り上げます。懸念解消の根拠を説明し、懸念が解消したか確認をします。④結論。本論の要約しまとめます。全体の課題に対する効果を説明します。プレゼンの目的に対するお願いとあいさつを行います。
スティーブン・ジョブズはプレゼンの天才と言われていました。綿密な準備と計算つくされた構成でプレゼンを行っています。多くの場合、本論を3点に絞って説明しています。特に有名なプレゼンが2つあります。YouTubeで見ることが出来ます。1つは、2006年スタンード大学の卒業式のプレゼン「Stay Hungry ! Stay foolish !」です。内容は、私の人生についての、3つの出来事を話したいと思います。①点と点をつなぐ。②愛と敗北。③死について。を語っています。もう1つは、2007年のiPhoneのプレゼンです。内容は、iPhoneには重要なブレークスルーが3つあます。画期的な3つの製品を紹介します。①携帯電話 ②超小型のiPod 。③インターネット・コミュニケーターです。
スライド作成時の注意点は、①使用するフォントは統一する。タイトルはゴシック。文はゴシックか明朝。②フォントの大きさはそろえる。目安は、タイトルは44~36、本文は32~24、ライン数は、5~8行。③1スライド1テーマ。④図やグラフや写真を入れる。⑤タイトルは分かりやすく。何のためのスライドかを表現する。⑥色のバランスを考える。多くの色を使わない。3~5色。⑦金額には「円」と「,」を入れる。などです。

・D2.3 デモンストレーションによる提案 : デモンストレーション(demonstration)は、一般的にはデモと表現されます。商品を使い実証しながらプレゼンテーションをすることです。主なデモンストレーションには、「ショウルームデモ」と、お客様にご協力をお願いする「ユーザーデモ」があります。一番の目的は、お客様の「問題・課題」が解決できることを証明することです。デモンストレーションの時は、資料などを見ながら説明することはできませんから、事前に商品を使用しながら説明するシナリオを作り、練習することが必要です。展示会などの、デモンストレーションは参考になります。
構成は、プロジェクターを使用するプレゼンと近いですが、言葉で伝えることが中心になりますので、他のプレゼンよりさらに分かりやすい表現を心がけます。構成は、序論、本論、結論は同じですが、本論の説明は、帰納法の事実→事実→結論よりも、結論→事実(理由)→事実(理由)にした方が、訴求力があります。また、本論の構成はいくつかのパートに分けて、全体→部分→部分、全体→事実→事実のように分割した構成の方が理解しやすい説明になります。
デモンストレーションのシナリオは下記のようになります。①御礼、挨拶、自己紹介。②今回のデモンストレーションの趣旨説明。③顧客と共有した課題と対策の説明。例えば、今回教えていただいた、御社の○○の課題に対して、弊社の商品で解決可能な理由をご説明させていただきます。④デモンストレーションの要点・構成の説明。訴えたいポイントを3点に絞って話す。⑤具体的な対策の説明。ポイントを1点ずつ分けて説明する。「まず1点目は○○についてご説明します。」。改善できる理由の説明にはいる。⑥振り返り。3点を説明の後は、再度、全体の要点を整理して説明する。⑦結論。改善点出来る点を強調する。顧客の実現できる「ありたい姿」が実現できる説明をする。改善点の理解を確認して同意を得る。⑧質疑。不明点疑問点の確認。質疑の時間も計算しておく。質問を想定して回答を準備しておく。⑨まとめ。御礼と検討(契約)のお願いをする。顧客の上司に匹敵する自社の上司も出席するように手配する。車の試乗会やモデルルームの見学などもデモンストレーションの一種です。デモンストレーションでは、直接お客様に商品を使ってもらうことが効果的です。自分のものになったときのことをイメージしてもらいます。それにより、デモンストレーション終了時に、自分のものを失ったような気持ちになり、購買欲求が増します。

訴求力のある提案をするポイントは、人の記憶を強化する仕組みには、4つの原則があります。提案においても、4つの原則を踏まえて説明することは有効です。①初頭効果。人は、最初と最後の発言をより記憶する傾向があります。最初にプレゼンの目的や結論を説明して、再度、最後にもう一度、説明することで、お客様の記憶も整理されます。②パターン化。 強調したい点を3点に絞って話す。松竹梅、上中下、LMSなど、三つの分類わけは、人が理解しやすい表現です。仮に7点について説明すると言った場合は、誰も集中して聞きません。3点であれば、人は集中できます。一つ目は、二つ目は、三つ目はと区切って説明します。理由、根拠など、同じパターンで説明します。簡潔に整理して説明します。③異質効果。逆説的な説明や驚くような話を入れると、プレゼン全体の印象が強くなります。ジョークなども効果があります。④復習効果。提案の説明が一通り終わった後、振り返りで再度、要点をまとめて説明すると印象が強くなります。
他にプレゼンの印象を強める方法は、以下のものがあります。⑤両面(二面)提示。商品を説明するときに、長所だけ(片面提示)を説明するよりも、あえて短所、マイナスポイントも合わせて説明したほうが、説得力の効果が高いとされています。正直なイメージを持たれ、信頼感につながります。⑥同調効果。他が使っている。他の人や会社の感想を紹介する。すでに他の企業が使っているから、大丈夫、間違いないと判断します。人の評価に頼ることで、もしくは、人と同じ行動をとることで、人は安心感を得ようとします。

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