雑筆46 不愉快なニュース⑯ 「無思考国家」

赤い薬と青い薬とは、1999年の映画『マトリックス』に由来していて、安定した生活を失い人生が根底から覆るとしても真実を知りたいのか、満ち足りた、しかしなにも知らない状態であり続けたいかの二択を指して言う言葉です。前者が赤い薬、後者が青い薬を飲むことに比せられています。映画『マトリックス』の序盤で、主人公であるネオは、反体制派のリーダーであるモーフィアスから、赤い薬と青い薬のどちらを飲むかを迫られる。モーフィアスはこう説明する。「青い薬を飲めば物語はそこで終わりだ。自分のベッドの上で目覚めて、そこからは自分が信じたいものを信じればいい。赤い薬を飲めば・・」。

お正月にまとめて本を読もうと思い内容もよく分からないまま、何冊か図書館で借りました。その中の1冊、秋嶋亮氏の「無思考国家 だから二ホンは滅び行く国家になった」(2022/5)「白馬社」は、私には衝撃的な内容でした。著者も本も全く知りませんでしたが、ネットで見ると売れているようです。私はマスコミの報道を鵜呑みにして信じてはいませんが、それでも周りの情報量は、圧倒的にマスコミやネットが多いです。それらの影響を強く受けます。それ以外の情報に触れるのは、今の日本では難しいです。この本は、普段触れることが難しい情報を知ることができました。権力者に不都合な情報を「陰謀論、デマ」で切り捨てる意見も多いですが、ほとんどが論理的に否定しているのではなく「感情的」に否定しています。

「陰謀論」イコール「ないこと」にしていますが、世の中は「陰謀」で満ち溢れています。欧米では「マキャベリズム」と言う考え方があります。「マキャベリズム」とは、「いかなる権謀術数であっても、政治目的のためなら許される」ということを意味します「目的のためには手段を選ばない」という意味で使われる場合もあります。孫子の兵法には「最上の戦い方は、敵の謀略、策謀を読んで無力化することであり、その次は、敵の同盟や友好関係を断ち切って孤立させることである。」とあります。中国の教えですが、日本でも戦国大名の多くが学んだ教えです。会社勤めをしていましたが、組織は3人集まれば、派閥ができます。あることないことの噂を流されて足の引っ張り合いが起きます。誰でもそんな経験はあるはずです。まして、企業と企業、国と国との競争と戦いなら陰謀が無い方が不思議です。世の中に「陰謀」などはないと思えるなら幸せな人生です。

「無思考国家」は、今の報道や周りの情報に疑問がない人は、読まない方がいいと思います。逆にマスコミは、権力者に都合の悪いことは報道しないと思っているなら、「赤い薬」になるかもしれません。もちろんそれをどう判断するかは、自分次第です。本の中から、気になったところを、簡単な抜粋です。詳細は「無思考国家」をお読みください。

・第1章 日本の暗黒化が止まらない「知性が武装解除されていることに気づいていない」 : 国民が知らないところで、「デジタル監視法」「種子法改正法」を始め、次々と危険な法律が整備されている。「侮辱罪」の厳罰化も決まった。「侮辱罪」は政治批判を取り締まる、為政者が勝手な解釈で運用できる「授権法」として運用されると思う。日本の経済主権にとどめを刺す条約、RCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)は議論すらされていない。憲法改正の手続きとなる「改正国民投票法」「銀行改正案」も、M&Aを簡易化する「中小企業等経済強化法」も成立した。地方銀行やメガバンクの筆頭株主は「外資」ですから、「銀行改正案」や「中小企業等経済強化法」は外資のための配当政策。さらに与党は「日本の金融市場の競争力を高める」という名目で、外資ファンドの法人税を20%に低減する方針を打ち出している。2016年のデータでは、東京三菱UFJの37.92%は外国法人です。三井住友の外資率はもっと高くて株主の48%が外資になっています。りそなの株主も、43%が外資です

国民を服従させる「監禁環境」とは : 日本は子供のころから徹底した管理教育を施し、絶対に権力に逆らわない国民を量産している。「人間牧場的な国家」が完成している。

現実が抹消され疑似現実に置き換えられる : 朝日新聞が「改憲賛成40%が改憲反対36%を上回った」という世論調査を掲載していましたが、これも捏造でしょう。仮に本当だとしても、最初から狙った結果が出るようにサンプルを抽出しています。世事に疎い高齢者を狙って電話調査をすればこんな結果になります。日本のメディアは官報化しています。

・第2章 直視すべき過去と現在と未来「国家は破綻しないが国民は破滅する」 : 「政治」とは、民意を集約して法律を設計すること。そして集めた税金を後世に配分すること。会計を精査し、無駄と利権を洗い出し、ねん出したお金を国民の所得や福祉に付け替える行為。

ところが「日銀が国債を買い取って配ればすべては解決する」というトンデモ理論が定着している。天下りの補助金だけでも国防費の2倍もあるし、日本の公務員の給与は、ざっと欧米の2倍です。国債を発行するのではなく、この利権を削って社会保障費に充てようとする意見が消されています。大企業に応分負担で課税して財源を作れという話も出てこない。経団連のグループ企業なんてほとんど法人税を払っていない。メガバンクだって最近まで、法人税を払っていない。国債の償還費はすでに国税の半分近くになっている。つまり国民が収めた国税の約半分が国債と言う借金の偏在に充てられている。しかしこれはあくまでも一般会計の話で合って、特別会計における償還費はすでに国税を超えている。2021年と度の特別会計における国債償還費は99.7兆円。つまり国税の170%のお金が、国債の元本と利息の支払いに充てられている。国の会計には国債費と言う費目があり、税金から国債の元本利息が支払われます。国債とは「徴税権を担保に国が発行する債券」のことです。「国債は国民の資産」と言う意見ですが、資産とは「その所有によって金利や配当が入るもの」を意味しますが、国債を発行した分、元本と金利が毎年課税されています。だから「国債は国民の負債」です。「国債は国民の資産」なら、納税で建て替えている1200兆円の国債の元本と金利が、国民の口座に振り込まれなくてはなりません。

日銀が公開している国際リストを見れば、所有者の90%以上が金融機関です。国は国債の発行と取引を仕切るだけで、国自体には出金はありません。借金を背負うのはあくまでも国民です。いざとなったら国は徴税権をかざして償還のため国民の資産を奪います。国民の福祉や教育や減税などの予算のためには、公務員が社会資本を私物化する「家産官僚制」を解体しなければならない。今の図式は、「国債で調達した現金を天下り団体に流し込む」⇒「それを官僚と4政治家と息のかかった企業で山分けする」⇒「償還の義務だけ国民に押し付ける」。

・第3章 無知をじかくしないという悪「帝国官僚制」が日本を絞め殺す : 国の借金が1200兆円、国民一人あたりに換算すると1000万円になります。国税の60兆円のほぼ全額が、公務員や特殊法人などの準公務員の給与、彼らの福利厚生、財政投融資の返済、天下り団体の維持費などにつぎ込まれていますだから税収では予算を編成できません。公務員が税金を食ってしまうから、これほど膨大な国債を発行しなくてはならないわけです。これは役人が作った借金です。国民の借金でなく、公務員の借金です。財政投融資とは、国の外郭団体が郵貯や簡保から借り入れることで、役人が作った借金です。一般会計と特別会計の重複を差し引いた正味予算は245兆円です。本体予算は国税のざっと4倍です。こんなことをしていたら国は潰れます。国家債務がGDPの240%に達しながら、公務員が税金を私物化し、国家会計を国債で編成するという官僚経済は全く解体されません。

小泉政権が発足した当時、350兆円だった国債が5年少々で倍増し現在に至ります。これに反比例する形で財政投融資(特殊法人の借金)の残高が減少しています。本来は官僚部門の債務として弁済すべき財投債が、国民の債務にすり替えられ、税金によって償還されています。小泉政権以来、年間20兆円ベースで財投債が償還されています。財源は国税です。国民は、これらの団体が起債した財政投融資と言う借金のしりぬぐいをさせられています。天下り利権によって生じた借金を国債に移し替え、国民に代理返済させています。3万人の官庁OBが天下る2万数千社の団体を統廃合(国防費の2倍を使い込む天下りシステムを解体しなければ)、国民の生活は破綻します。

・第4章 洗脳と調教の国家「命がけでなければ語れない事」 : 財政問題に関しての改善策は、国会の承認を受けずに官僚が秘密裏に編成する特別会計を廃止して、一般会計に一元化する。これにより国家予算の内訳と明細を可視化させる。国防予算の200%相当の予算を浪費する天下りを禁止し、国の外郭団体とその傘下企業を統廃合する。これにより国債の発行高を現行の50%以下に抑える。公務員の給与を都道府県の中小企業の平均値に合わせ、昇給をGDPとスライド制にする。地方公務員の天下り先となっている地方公社や第三セクターを廃止する1200兆円に膨張した国債の約半分は(郵貯や年金の借入である)財政投融資によるものであることから、それを起債した独立行政法人や旧特殊法人の資産を処分するとともに、財政投融資の償還が終わるまで該当法人の職員給与を減額する。このままでは、いずれ国民負担率(所得に占める税金と保険料の割合)は、60%を超えます。それは腐敗官僚制によるものです。国民は、公務員の奴隷とです。

・第5章 破局の時代に突入した「改憲は与党と野党の双方にとって美味しい」 : 「緊急事態条項」が改憲案に盛り込まれると、支配層の自由解釈によって運用できる「授権法」になります。「緊急事態条項」が一旦発令されれば、内閣は法律と同等の政令を設定できるだけでなく、国民はそれに服従することが義務付けられます。集会や言論の自由も軒並み停止されます。「緊急事態条項」の発令下では国政選挙が実施されないので、国会議員は与野党とも終身議員になります。そうなると与野党とも落選のリスクがなくなります。ずっと国会議員の身分が保証されます。政治システムは、選挙の争点をすり替えたり曖昧化したり、改ざんプログラムによって与野党の議席数を配分調整する「選挙権威主義」です。国会は前もって与党に質問書を渡し、官僚がそれに答弁を書いて、閣僚に読ませているだけです (法律の9割近くが国会議員ではなく公務員によって作られる閣法です) 。だからもう国会なんて開く必要はない。最初から問題の「中心」を避け、「周辺」の議論に徹することが与野党間で談合されています。野党は常に重大な問題から目を背け、重要度の低い問題だけを取り上げ、やっている感をアピールしています。

秋嶋亮氏の著書「無思考国家 だから二ホンは滅び行く国家になった」から、財政の部分だけを要約して抜粋しましたが、実際の本の内容は、「原発」「コロナワクチン」「憲法改正」「国際政治」「マスコミ」など、よくもここまでかけたと思うぐらい多岐にわたっています。「赤い薬」を飲む勇気があるならば、「劇薬」の可能性もありますが、本書を読んでみるのもいいかもしれません。

・「五輪の汚職」「安倍元首相の暗殺」「自民党と旧統一教会」「エッフェル姉さん」「万博の放漫予算」「パーティー券問題」「ステルス増税」。まだまだこの後も色々と出てきそうです。今の政権が、いかに腐敗しているかという実態です。これだけの腐敗政権で、国民の支持率も低いのに、自民党政権が維持し続けられていることが不思議です。マスコミは「お笑い芸能人の性的強要報道」に一所懸命です。私の周りでも報道の多さに違和感を持っています。パーティー券問題では、自民党の私的な「政治刷新委員会」での派閥の解消の報道が中心になっていますが、国民はそんなことを問題視していません。「パーティー券問のキックバック」「収支報告書の未記載の脱税行為」「企業献金と政党助成金の2重取り」「連座制などの罰則強化」などを問題視しており、是正を求めています。お得意の論点のすり替えが行われています。マスコミは「官報」です。「政官財」の代弁者です。重要な問題から国民の注意をそらす目くらまし役です。この後さらに、決定的な問題が出た時に、自民党政権の終焉に繋がることが予想されます。

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