雑筆 32 不愉快なニース④ 財務省解体

私は、ずっとビジネスの世界で生きてきました。政治の話は時間の無駄だと思ってきました。ですから、読む本は、ビジネスに関係のある「プロジェクト」や「マーケティング」や「営業」。そして「世界の経済情勢」や「技術革新」でした。見るテレビも、TVerでバラエテイかビジネス関連でした。しかし、最近は政治のことも知らなければならないと思い、それらの関連書籍や番組も見るようになりました。最近読んだ本で、特に面白かったのは、元大蔵省官僚で、安倍内閣の時に「内閣参事官」なども務めた、高橋洋一氏の著書「財務省を解体せよ」(2018/6)です。①政治家が政策を作ることなどできないはず。②なぜ、財務省は最強の官庁と呼ばれているのか。③日本を実質的に、支配しているのは「財務省」ではないのかなど、私の疑問が分かりやすく解説されていました。

・「財務省を解体せよ」: はじめの部分に、福田淳一前事務次官のセクハラ発言。「おっぱい触っていい」。女性記者に対するスキャンダルが書かれています。森友学園問題の改ざんに関しては、財務省が政治家に忖度することはない。「総理の責任」につなげたいマスコミが取り上げている。加計学園の的外れな非難などが書かれています。総理の問題でなく、官僚の責任だと感じていました。財務官僚は政治家を恐れていない。むしろ政治家が財務省を恐れている。政治家は、国税庁がすべての資金の出入りを握っていることを知っているから、その上部組織の財務省を警戒し、一目置いている。怖いもの知らずの財務省は、意にそぐわない政策を進めようとする政権に対して、クーデターを起こすこともあります。

当時、第一次安倍政権は公務員改革を進めており、これが官僚には大いに不評でした。天下りが困難になるということで、激しい反発があったのです。そこで、事実上の官僚の代表である財務省は、安倍政権に様々な嫌がらせを仕掛けました。国会答弁の想定問答の差し替えなど日常茶飯事でした。想定問答の中の肝心な部分を意図的に削除してしまうのです。こうしたおごりと欺瞞に満ちた財務省が、信頼回復のためには「財務省解体」が必要だと考えています。財務省解体とは国税庁を財務省から切り離し、日本年金機構の徴税部門と合併させて、新たに税金と社会保険の徴収を一括で行う「歳入省」を新設することです。他省庁は予算を求め、政治家は徴税を恐れ、マスコミはネタを求め、財務省にひれ伏しています。世界を見渡しても「予算編成」という企画部門と、「徴税」という執行部門が一体となっている財務省のような組織は例外的です。この2つの巨大権限が集中してしまっていることが、財務省のおごりを生み出し、欺瞞を許しているように思えます。

安部内閣は「経産省内閣」です。消費税の2度の延期や財政出動も財務省の意向左右されずに比較的柔軟にできました。金融緩和をすれば失業率が下がり雇用環境が良くなります。官邸を財務省出身者に握られていたらこうした政策は実現できなかったはずです。「増税しても景気は悪くならない」「消費増税を見送ると国債の信用がなくなり暴落する」などの財務省の持論はすべてでたらめです。小泉政権と安倍政権以外は財務省の言いなりです。小泉政権では、「私の在職中は、消費増税を上げない」。安倍政権では「消費増税して経済が悪くなったら元も子もない」と財務省の政策と対立していました。既得権のある人は、経済が悪くなると相対的に有利になります。財務官僚は経済が悪くなれば地位が向上します。

官僚には天下りという大きな既得権があります。日本でのバランスシートでの天下り法人への出資比率は先進国の中でも際立って高いです。これほどまでに天下り法人を国が保有している例は珍しいです。天下り法人への出資金は、法人を民営化すれば、容易に回収できます。海外の人たちは、財政危機と言いながら、出資金の回収を行わない日本政府に対して大きな疑問を抱いています。バランスシートの資産サイドを見ると、政府関連会社への貸付金、出資金が大きいのが分かります。国債を償還するとすれば、資産売却、つまり政府関連会社の民営化が筋です。資産売却すると天下りができなくなってしまいます。そこで「償還には増税が必要」というロジックになります。財務省と対峙してきた安倍総理と異なり、岸田氏は財務省に何も言えない可能性が高いです。岸田氏の親戚筋に財務省人脈が多いのは有名な話です。財務省としては「岸田氏なら取り込みやすい」と踏んでいる節があります。「スクープはほとんど官僚リーク」「官僚と記者クラブの共犯関係」「政治家とマスコミを操る官僚の情報力」についても書かれています。

国の予算はどうやって決められるかというと、国の予算は国会で審議され、議決されます。この予算案は財務省の主計局で作成されます。主計局は、各省庁から概算要求(シーリング)を受けた後、予算の査定を行い、割り振りをして国家予算を編成します。省庁や政治家が、政策を立案・実行するには必ず予算が必要になります。概算要求を出しても、財務省の査定の結果、予算が認められなければ実行できません。自然と力関係が生まれます。主計局の配下に「国税庁」があります。実際に税金を徴収するのは、国税局と税務署です。主計局が予算編成権を権力の源泉にしているのに対して、市税局には徴税権があります。政治家は国税庁に資金のやり取りがすべて把握されていることを知っています。財務省には、経済外交では外務省より権限が大きい国際局。輸出入に目を光らす関税局があります。各省庁の給与を管理している「財務省主計局給与共済課」。人事を管理している「人事院給与局給与第二課」。国家公務員の数を統括している「総務省行政管理局」などがあります。それらは別の組織ですが、財務省から出向した官僚が課長ポストを独占しています。

税金と年金などの社会保険料の徴収能力を持つ国税庁は、政治家も恐れる一大「権力機構」です。財務省は、国税庁を死守します。財務省は「企画部門」です。国税庁は「執行部門」です。世界を見渡しても、「企画部門」と「執行部門」が一体化しているケースは極めて珍しくて非常識です。民主党は2009年の政権交代の時に「歳入庁の導入」をマニュフェストに盛り込みましたが、実現しませんでした。民主党政権末期では、野田総理が消費増税しないと言っていたのに増税しています。公約違反です。政治家の公約とはその程度のものです。

霞が関改革と切っても切り話せないのが「天下り問題」です。安倍総理は、第一次政権のころから問題視していました。官邸で内閣参事官をしていた時に、「天下りの根絶を含む公務員制度改革を作ってくれ」と言われ「経済財政諮問会議」で議論しましたが、官僚の抵抗はすさまじいものがありました。官僚が出身省庁に忠誠を尽くすのは、天下りが保証されているからです。官僚の抵抗にもかかわらず、第一次安倍政権では、「国家公務員法の一部改正する法律」と「再就職監視委員会」を通しました。

民主党政権の時には、「現役出向」を退職間際の人に拡大して見せかけだけ減らしました。霞が関改革は政治家にとって鬼門です。「本気で霞が関改革をした、原敬、犬養毅は暗殺された。戦後も同じだ。福田 赳夫のように行革をやろうとした内閣はすぐにつぶされる」と先輩に言われました。橋本龍太郎内閣は、一応改革に成功しましたが、長期政権になりませんでした。などと書かれています。財務省は解体すべきと思いますが、最近は、マスコミで「財務省解体」が取り上げられることはありません。タブーな話題なのでしょう。「財務省」に逆らうことは、政治家も財界もマスコミも難しいと思います。「高橋洋一YouTubeチャンネル」の方がマスコミのニュースより参考になります。

高市早苗さん: 珍しく不愉快ではないニュースです。TVerで 10/3のプライムニュース「高市早苗さん、桜井よしこさん」の高市早苗 科学技術相 IAEA出席のニュースを見ました。汚染水に対する中国への反論を、とっさに英語でスピーチしています。頼もしいです。総会後の日本のレセプションでは「福島の魚とお酒」」を目当てに、各国からあふれんばかりの人が参加したそうです。他に、国家経済安全保障、サプライチーン、人権問題、セキュリティクリアランス、国家安全保障、外交、防衛、テロ、スパイ、特定秘密保護法についても話していました。自分の言葉で話しています。信念をもっていることが感じられます。

「美しく、強く、成長する国へ。私の「日本経済強靭化計画」(2021/9)を読みました。 日本を守る責任。未来を拓く覚悟。「成長投資」「危機管理投資」「人材力の強化」「前世代の安心感創出」。国債を発行して政府支出を行えば、マネーストックは増える。「政府の借金」が増えることは「国民の資産」が増えること。国内生産・調達力の強化。医療やITや省エネへの研究開発や半導体やロボットアニメ。日本の強みのある記述を伸ばす。人材育成では、デジタル対応力の強化。「経済安全保障の強化」「サイバーセキュリティの強化」「地方創生」。常に「主権者の代表」として「生活者の視点」で政策を構築する作業を大切にしてきた。日本国憲法と皇室に関しても書かれています。内容は具体的で私にも分かりやすかったです。

高市氏は(3日に出演したBS番組で、来年9月に想定される自民党総裁選への立候補への意欲を問われた際に「また戦わせていただく」と答えたことの真意を問われ)今は岸田内閣として一つでも多く実績を上げられるように、閣僚として自分の所掌範囲で精いっぱい働くということに尽きると考えている。来年の総裁選挙に限定して、岸田総理と戦うというようなことを申し上げたつもりはない。ただ、自分のような者が必要とされる時が来たら、何であれ私はしっかり戦う。そういう政治家としての心構えを述べた。(記者会見で)。高市氏は、マスコミのアンチが多いように感じられますが、私は、マスコミ受けの悪い政治家は、良い政治家だと考えています。岸田氏は財務省のカンペを読むだけで、理解しているとも、気持ちがあるとも思えません。「明日は今日より必ず良くなる」「異次元の少子化対策」など、何を言おうとしているか分からない総理より、100万倍も良い首相になると思います。前述の高橋洋一氏は、政治家に国債や税金の説明をしたが、理解したのは、安倍首相と高市氏だけだったと書いてあります。自分の利権にしか興味のない政治家だらけです。

堤未果氏の「株式会社アメリカの日本解体計画」(2021/1)をざっとですが読みました。「スキャンダルや大事件、大災害などのビックニュースに国民の目が集中している間に、将来を大きく変えかねない重要法案がひっそり通過してしまう。ニュースがある事件一色になったら、その裏で何かが起きている。」「外国資本は日本のメディア、特に多いのが日テレとフジは、中国系メディア関連がほとんどを占めている。NHKが「何を報道したか」ではなく、「何を報道していないかを見る。」と書いてありました。

10/6にジムでお昼のワイドショーを見ました。どのチャンネルも、トップニュースは「ジャニーズのNGリスト」です。各チャンネルとも、同じ内容のニュースを、同じ論調で同じ時間で同じ長さで放送しています。途中で切り上げましたが、15分以上流れていました。どのチャンネルを見ても同じ内容が刷り込まれます。誰がコントロールしているのでしょうか。気味が悪いです。テレビ局は、伝えたい内容を「御用学者」や「怪しげな専門家」や「芸能人」のコメンテーターを使って発信しています。責任回避です。「テレビ局の意にそぐわない発言をしたら呼ばれなくなった」は、よく聞く発言です。

10/6の日刊ゲンダイのネットの記事「ジャニーズのNGリスト。会見以上に酷い首相官邸の“やらせ会見”挙手しない記者が指されるザ・茶番劇」の中に、テレビや新聞は早速、この“やらせ会見”を批判しているのだが、ジャニーズ事務所の会見以上に酷いのが首相会見だ。新型コロナ禍で会見場の記者席は100席近く減らされ、今も日本雑誌協会(雑協)の加盟社やフリーランスなどの割り当ては10席ほどしかない。会見時間は区切られ、「限られた時間内に多くの記者に質問してもらうため」といった理由で、再質問(更問い)も認められない。そして官邸に常駐する記者を優先的に指名し、雑協の記者やフリーランスはほとんどと言っていいほど当てられないのだ。驚くのは、「質問がある人は挙手を」と呼びかけながら、なぜか挙手していない記者が指名され、その記者が質問しないうちから首相が手元の資料の「答え」を探し始め、用意していることだ。これぞ茶番劇と言っていい。テレビや新聞はジャニーズ会見の「NGリスト」を問題視するのであれば、首相会見の“やらせ”も追及してほしい。ジャニーズと政府が同じことをしているのに、片方だけを一方的に批判しているのは、「いじめ」です。世の中の「いじめの風潮」は、マスコミが助長しています。

「増税メガネ」「増税クソメガネ」などと、ネットでは揶揄されています。岸田氏は、気位が高そうなので、いら立っているようです。それよりもそんな総理がいる日本が不幸です。解散も検討しているようですが、それをきっかけにして「自民党が崩壊」し、「財務省が解体」されるようなことが起きれば、後世に、岸田氏の名前は、「日本を破滅から救った首相」として、名前が残るかもしれません。

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