不愉快なニース㉓  復興予算流用問題

「東日本大震災」は、2011年3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の巨大地震。死者・行方不明者が2万2200人以上にのぼる大災害です。東京電力福島第一原子力発電所の事故も発生しました。国内史上最大の地震による最大震度7の揺れでした。2021/3/10のBBCのニュース「原発事故から10年がたったが、原発周辺はほぼ当時のままの状態で残され、住民は帰還できていない。関係当局は事故処理の完了まで最大40年かかると予測。政府はすでに処理作業に何兆円も費やしている。現在も、福島には立ち入り禁止の区域が残っている。関係当局は住民が戻れるよう、廃炉と除染の作業を進めている。ただ、大きな問題が残ったままだ。放射性物質で汚染された物や燃料棒、100万トン以上の汚染水などを安全に除去するには、今後30~40年間で何万人もの作業員が必要になる。かつての住民の中には、放射線への恐怖から2度と元の家には戻らないと決め、別の土地で新たな暮らしを築いている人たちもいる。メディアは昨年、政府が来年にも、フィルターで汚染を軽減した水を太平洋に流し始める」と報じた。2024/2/7のニュース「 東京電力は7日、福島第一原子力発電所の建屋外に汚染水が混ざった水が漏れたと発表した。漏れた量は推計5.5トンで、ガンマ線を出す放射性物質の量は220億ベクレル。海への流出や外部への放射能漏れは確認されていないという」。「東日本大震災」から13年が経ち、過去の出来事のような気がしていますが、現地では、放射能汚染など、まだまだ継続している問題を抱えています。メディアでは3/11になると、地震のニュースが報道されます。

・2024/3/11 このままでは続けられない」震災の記憶伝える語り部、資金難と高齢化に危機感 それでも伝えたい現状。東日本大震災の悲劇を繰り返すまいと、被災地では語り部たちが教訓の伝承に取り組んできた。1月の能登半島地震など全国で自然災害が多発し、命を守るためにも伝承の重要性は増すばかりだ。一方で、資金や後継者の不足から活動の継続に不安を抱く語り部は多く、支援を求める声が上がっている。伝承団体の連携を支援している公益社団法人「3.11メモリアルネットワーク」が23年12月に公表した調査結果によると、岩手、宮城、福島の被災3県で活動する24の伝承団体のうち23団体が活動の継続に不安を抱えていた。背景には、伝承団体が収入を得づらくなっていることがある。24の伝承団体のうち20団体が、講師料などの対価収入を活動資金としている。しかし伝承団体の来訪者数は13年の約25万人をピークに、関心の低下やコロナ禍に伴い右肩下がりで、23年は約19万人だ。 一方で、国の財源を活動資金としているのは24団体中、3団体にとどまった。国に伝承活動の支援制度はなく、被災者の生きがい作りを支援する復興庁の「心の復興」事業など他制度を活用しているとみられる。 この他、県の財源と回答したのが3団体、市町村の財源は9団体だった。今後期待する財源として19団体が国を、11団体が県を、12団体が市町村を挙げており、伝承団体の期待に行政が応えられていないことが分かる。 ただ、行政も懐事情は厳しい。1133人が犠牲となった宮城県東松島市は23年度、伝承活動に取り組む2団体の支援に、計50万円の補助金を交付した。担当者は「人手やお金の面で、できる範囲はこの程度だ」と話す。被災した駅舎を改修した伝承施設の維持や運営に毎年かかる約1500万円の負担が重い上、職員は被災者向けの交付金の手続きなど複数の仕事を抱えており余裕がないためだ。 宮城県は23年度、伝承に関する予算として約14億2800万円を当初予算に盛り込んだそのうち、活動を支援するために伝承団体に直接交付された補助金は900万円だ。県復興支援・伝承課の担当者は「県の支援が十分とは言えない」と自己評価する。岩手県には同年度、伝承団体を直接支援する補助金制度はなかった。 両県は国に対して、担い手確保や育成など、支援制度の創設を求めている。復興庁は23年度、「復興にかかる知見の収集」として1億円の予算を計上したが、伝承団体の課題を調査したのみだ。

【Mr.サンデー】被災地支える“和菓子の建築家”「インスタントハウス」開発物語【リアルストーリー】甚大な被害となった能登半島地震。石川県輪島市の避難所に「お菓子の家」のような「インスタントハウス」が 建てられ被災者を支えている。コンパクトで軽量、輸送や組み立てが簡単に短時間で建てられるのが特徴だ。これを作ったのが“和菓子職人を夢見る建築家”名古屋工業大学の北川啓介教授。斬新なアイデアはどう生まれたのか?開発のきっかけとなったのは13年前の東日本大震災で子供たちにかけられた“ある言葉”だった。「ねえなんで仮設住宅ができるまで、3カ月も半年も待たなきゃいけないの」。「インスタントハウス」ができて、3歳の女の子が「お家ができた」と大きな声で言った時に、北川氏はたまらなくなって外に出て泣いたそうです。

2020/3/11。「税金が驚くほどムダに…大震災から9年、「復興予算流用問題」を問う。なぜ復興予算は復興以外に使われたのか」。『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。福場ひとみ氏の記事の記事。「霞が関の改修費用」「沖縄、北海道など全国の道路改修・新設」「廃止予定の公務員宿舎の死守」「芸術家の海外派遣」「核融合実験炉計画」「南極でのシーシェパード対策費」「クールジャパンの推進」「検察運営費」「荒川税務署の改修」「東京スカイツリー開業プレイベント」「航空機購入費」「米国での戦闘機訓練費」「ODA」「小型衛星局」など数え上げればきりがない。いずれも予算名には「復興道路」など、もっともらしい名前が冠につけられていたりする。聞いてみると「普通の道路です。道路のないところに道路ができると、防災に役立つでしょ」などといった、雑なものだった。当時の菅直人首相から五百旗頭議長へ渡された諮問書には、「被災地域の復興なくして日本経済の復興はない。また、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない」と記載されていた。韻を踏んだポエムのような一節ゆえに、一見、深い意味がなさそうに見せながら、この後、この一節が政府の復興基本方針のひとつとして正式に採用され、いわゆる流用を正当化する免罪符となっていた。流用したくてたまらない彼らにとって最も重要な一節だったわけである。その証拠に、復興構想会議を経て増税がなされた後、これを財源とした2011年の「三次補正の概要説明」にいたっては「被災地域の復興なくして日本経済の復興はない」の一節は完全に切り捨てられ、景気対策としての国内空洞化対策を正当化するために「日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない」の言葉だけがアピールされていた。復興予算流用で見られる国家のロジックは、「復興予算はあくまで国のカネ」であるということ。国は「身内」であり、個人は「他人」なのである。他人が自分の財布を使うのはひどく厳しい条件をつけるが、自分の身内なら、海外のイベントに使っても宇宙事業に使っても差し支えないということのようだ。税金は困っている人に届くのではなく、受給テクニックに手慣れている人たちに貪り取られている。残念ながら、これがこの国におけるあなたの税金の使われ方の現実なのだ。

・2021/3/1の毎日新聞の記事:東日本大震災の復興予算1兆円超が被災地と関係の薄い使途にも流用されていた問題で、復興庁が2013年に管轄省庁に返還を求めた23の基金事業を調べたところ、最終的に少なくとも7割に当たる約8172億円が返還されないことが明らかになった。政府が11年7月に公表した復興の基本方針に「日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない」と盛り込まれたことが流用につながったとみられる。11日で震災から10年を迎える中、復興予算の使途の検証が求められる。

福場ひとみ著「国家のシロアリ: 復興予算流用の真相」2013/12/12を読みました。現在は販売されていません。Amazonのレビーには「Amazonさん、小学館さん、kindle版を出してください。お願いします」とありました。よく一人でここまで調べて、このような本を書かれたと敬服します。孤軍奮闘だったと想像します。2023年版も出してほしいですが、森永氏の「ザイム真理」の出版のいきさつを読むと、今の時代に出版するのはかなり困難なのではと推測します。しかし、今の時代は、出版社に依存しなくても、「電子書籍」を自分で出版できます。もしネットに挙げていただいたら、必ず買いますのでお願いします。本の中で今の時代にも当てはまるのではと思う部分を抜粋しました。

プロローグ: 19兆円と言う膨大な復興予算計画の大半が、被災地年無関係な事業に使われている。国会議事堂の本会議場の照明LED化に1億2000万円。耐震名目で、総額7億円が復興予算から使われていた。凍結されたはずの中央合同庁舎の回収に2013年度予算に17.5兆円の予算が復活。自民党が「国土強靭化」と題する公共事業の復活。官僚にとって、その事業の予算が、復興予算だろうが、本予算だろうが、計画した予算が通るなら、どちらでも構わない。復興予算の流用は、国民のカネの使い道を考える官僚、決定する政治、それを監視するメディア、の欠陥を浮き彫りにした官僚たちはいつからか「シロアリ」と揶揄されるようになった。国家のシロアリは、国家を倒壊させる

・第一章 問題の発覚:-予算書なんか、見ていない- 「復興特別会計」と検索しただけで、およそ復興とはかけ離れた予算書。新聞やテレビにおいてそのことを指摘するメディアはなかった。「予算書」は「国会提出」とあるので、少なくとも国会議員は目を通しているはずだ。2012/7特別会計に詳しい、桜内文城参院議員を訪ねた。「東日本大震災復興特別会計」と書かれていますが、どれを見ても復興らしきものに使われていない予算ばかりでしょう。」「資料には、第180回国会提出とありますが、国会議員なんて、誰も予算書は見ていないんです。国会議員がいかに仕事をしていないか、よく分かるでしょう。予算をチェックするのが仕事のはずの国会議員が、こんな基本的なものすら見ていないんだから」と、まるで自嘲するかのようだった。予算を利用する官僚、予算を見ない政治家、復興予算は彼らによって「流用」されているのではないか?

・第二章 流用の実態:-被災地には買い改修予算なし- 復興予算が、被災者よりも、官僚や政治家のためになる事業に投じられている現実。復興予算に「全国防災対策費」という名目ができたことにより、いつか来る地震に備える防災目的であれば、被災地でなくても復興予算を投じることができるようになった。

-復興予算名目にして要求しろ- 復興予算が「国家予算」であり、国の施設に予算を出すかどうかは、霞が関の中で話が付く。各省庁が要求し、財務省が査定でyesといえば手当される。ある省の課長は、「財務省の主計官から、欲しい予算があったら、復興名目で出したら付けてやるから、復興に関連があるように書いて要求しろ。と言われた」と証言。

-シロアリ官僚のお家芸- こうして、復興予算は「おいしいボーナス」として各省にばらまかれ、気が付けばあらゆる予算が、それぞれの担当する官僚たちに都合の良い理屈を根拠に蝕まれた

第三章 進まない復興:-中央集権と復興の蹉跌- 復興予算は、国で集められ、国家予算として被災地に向けられるわけだが、これは、従来からの中央集権的な日本の税金の流れそのものである。中央省庁が地方に権限を譲らず、予算を一括管理した結果、被災地外の国の事業に優先的に配分される一方で被災地での復興が遅れている。「国の予算は自分たちのもの」「地方に任せたら変な使われ方をするかもしれない。国の予算は全て我々が管理しなければダメだ」というのが中央官僚のマインドなのかもしれない。

第四章 政局化:-野党の攻撃材料に- こうした混乱に乗じて、事態は政局化していった。衆議院解散が近いとささやかれる中で、野党・自民党は民主党を与党から引きずり下ろす決定打として、復興予算流用問題を材料に徹底追及する構えを見せた。10月11日に開かれた「衆議院決算行政監視委員会」は、委員14名中8名を占める民主党委員が欠席。参考人となっていた財務省や復興省などの官僚も、民主党の指示を受けて欠席。委員会は流会した。

-新聞・テレビの変節- 記者クラブの在り方を問題視している、東京新聞・長谷川幸洋氏は、「新聞は記者クラブの中で官庁が要約したペーパーをもらって報じるのが習い性になっている。要約された資料に問題視されるような予算は載せない」などと語る。国の予算が本来の趣旨と関係ないことに使われるなんて、「いつものこと」だったのかもしれない。驚くようなことではなかったということか?むしろ国民が本気で怒ってしまったことに驚き、国民と一緒に驚いたふりを見せて、その場を取り繕ったということだろう。

-メディアへの復興特需- 聞やテレビ、さらに雑誌などにも「政府広報予算」から復興特需が流れていた。霞が関と同じように、新聞やテレビにとっても、復興予算は「おいしいボーナス」だったのではないか?

第五章 流用の真犯人:-全国防災という裏公共事業- 復興事業において全国防災事業は「裏公共事業」としての側面が強かった。表向き、公共事業を削減する方針を取っていた民主党政権下において、一般会計による通常の公共事業とは別の項目建てで、事業を組み入れることができる。こうして政府と野党の思惑は一致した。国会で国の予算を語られるとき、通常は一般会計しか対象にならない。特別会計が除外されている。国家予算の額からすると、一般会計は全体の5分の1にも満たない。歳出削減もこの一般会計と言う小さな枠でのパフォーマンスに過ぎない。

-日本と言うシステム- 流用を起こした真犯人は誰だったのであろうか?犯人は民主党政権そのものであったし、被災地外への流用を強く望んでいた自民党や公明党なども深く加担した。それぞれの背景に、流用を先導した官僚たちがいた。それをスルーしたメディアも共犯関係にあったといえる。復興予算の流用の構図は、組織間の見事な相互作用によって成り立っていたといえる。彼らは一見、対立しているように見えて、本当は利害を共有する共犯者である。30年以上にわたって日本政治を研究し、ベストセラー「人間を幸福にしない日本というシステム」の著者カレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学名誉教授)は、「権力システムの代表が官僚である。官僚主導の小国家がそれぞれ形成される。一番恐ろしいと思うのは、それを誰も支配していないということ。例えば米国では、大統領の任期である4年ごとに顔触れが変わる。日本では逆に政権が変わっても、官僚だけが変わらずに管理者の地位に居続ける。欧米では官僚の権限は法律で制限されているが、日本ではそもそも法律を考えるのが官僚であり、彼らの暴走を止める手立ては何もない」と指摘している。

第六章 変わらない国:-安倍政権の復興枠- 新事業仕分けが行われたその時に、野田首相は衆議院の「解散」宣言を行った。「自爆テロ解散」とも揶揄された。こうして2012年の年末に自民党政権に交代し、2013年の年初は復興増税で始まった。復興増税は、1月から25年にわたり所得税から2.1%が増税されることになった。更に1年後となる2014年6月からは、10年間、年1000円が住民税として上乗せされる。「復興のためなら仕方ない」と国民が受け入れた。前政権が残してくれた増税というありがたす置き土産を背景に、安倍のミックスと言われる積極財政路線を引いていく。前政権の復興基本方針を受けて、特別会計の使途は被災地に限定された。ところが被災地でない場所の「復興事業」は減るどころから増えていった。今度は一般会計の方に、復興予算とは別の「復興枠」が新たに一般会計の中に登場した。復興予算の流用はなくなったが「復興」と名を冠された「被災地以外」の予算は、急拡大した。「復興」と「防災」と言う言葉が世論の公共事業批判をかわすための、格好の大義名分になるからに他ならない。「復興」と言う言葉には、国民の批判さえ封じ込める大きな力があるからだ。これほど便利な言葉が他にあるだろうか。

-システムは変えられるか- カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、「鍵となるのは若者達だ。日本の若者はいまだに、政治に対する正しい情報を持たず、官僚にとつて都合の良い無関心な状態におかれている。彼らが目覚め、新聞を疑い始めたときに、本当の変化が始まる。人間を幸福にしない日本と言うシステムから脱却すべきことを全ての日本国民が知るときは、決して遠い将来でないと信じている」と書いています。日本国民が知るときは来るのでしょうか?

エピローグ:復興予算の流用問題によって、国民全体が「絆」の名のもとに心を一つにし、一丸となって復興に当たっていくという期待はもろくも崩れた。行政と政治に対する漠然とした信頼と期待感が、あっさりと打ち砕かれた。流用問題は、税金が一度、私たちの手元から離れて言った瞬間、知らぬ間に誰かのお金に化けてしまう可能性を物語っている。復興予算は一日も早い復興を待ち望む被災者に届けられる前に、税金の使途を握る人たちによってばら撒かれ浪費される。

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