BtoBセールスの原理原則20 「E.契約活動(Closing)」-「E3.契約の合意」

「E.契約活動(Closing)」は、提案したお客様に対して、契約を実施するフェーズです。「E.契約活動(Closing)」の下位のレベル2は、「E1.契約の依頼」と「E2.障害への対応」と「E3.契約の合意」の3つに分けました。「契約の合意」の下位のレベル3は、「E3.1 契約の締結」と「E3.2 契約時の確認項目」と「E3.3 失注時の対応」の3つに分けました。契約できなかった(失注の)時の対応も決めておきます。

・E3.1 契約の締結 : 契約の締結は次の手順になります。①提案条件で納得されたことを確認する。②契約の締結に進むことの了承を得る。③契約条件と契約内容を再度確認する。営業パーソンの仕事は、成約がゴールではありません。代金回収まで、きちんとされて完結します。「回収なくして販売なし」とも言います。納品したのに代金の回収が滞ると、その処理に時間が取られるうえに、精神的にも辛い状況になります。円滑に代金回収ができるように営業活動をおこないます。代金回収の注意点は以下のようになります。①確実な顧客と取引をする。営業パーソンは毎月の数字に追われるあまり、業績の悪い会社や怪しげな会社からの商談に乗ってしまうことがあります。貸し倒れを防ぐためにも、商談を進める前に、顧客の信用調査を行い過去の信用実績を調べる「与信審査」を行います。社内にその仕組みがなければ、取引のあるリース会社にリース案件として調べてもらう方法もあります。事前の信用調査として登記簿を確認することも場合によっては必要です。②契約内容を再度確認して、契約書を回収する。取引条件を明確して、契約書は納品前に必ず回収します。契約条項の支払条件や金額の確認はもちろんのこと、納品の品目や条件なども確認しておきます。契約書には必要な項目は記入されているか、必要な捺印はされているかなどを確認します。顧客と契約条件を再度確認します。③契約通りの納品を行う。契約の品目、数量、期日、場所に確実に納品します。営業パーソンは納品に立会、商品の不良や破損などがないかを顧客とともに確認します。④速やかに請求処理をする。営業パーソンは忙しいと、社内の事務処理を後回しにしがちです。請求書が顧客の請求サイクルに間に合わない場合は支払いが遅れます。納品確認後は速やかに請求処理を行います。⑤代金の回収を確認する。支払い日の確認し、予定通り振り込まれているか、初めて取引をする会社に対しては確認します。集金する場合は、決まっている集金日には確実に訪問します。領収書も準備しておきます。契約後の条件変更は要求されても認めてはいけません。

・E3.2 契約時の確認項目 : 契約時に漏れがないようにあらかじめ確認することを明確にしておきます。契約する時には、契約に関する一連の作業などのチェック表を作っておけば漏れが無くなります。それに基づいて説明して、お客様と確認することで、お客様との認識の違いを防ぐことができます。お客様に契約に関する作業を一覧表にして説明すれば確認もしやすくなり安心してもらえます。私が使用していた、主な一覧表の確認事項が次の通りです。①契約書を持参し、内容を説明する日時。②契約書の日付。③契約書がお客様の社内の決済が終わり回収可能な日。④商品を発注する日。発注しても大丈夫という確認できる日。⑤商品を納入する日。納品の希望日、希望時間。納品可能な日から調整します。⑥商品を納入後の検収終了日。⑦必要であればインストラクターの説明や教育の予定日。⑧支払の日時、支払方法、支払の条件など。⑨無償保証期間などがあるものに関しては、その期間と終了日。上記内容に限らず、顧客と契約の締結時に説明をして確認しておいたほうが良いものは、一覧表にまとめて、文書で説明し、お客様にもコピーをお渡します。そして文書にサインか捺印をもらいます。

・失注の時の対応 : クロージングを行って、契約に結び付けば、ハッピーエンドですが、現実はいつもうまくいくことばかりではありません。失注することもあります。そんな時に、一生懸命営業活動を行ってきたのですから、がっかりするのはしょうがないですが、「捨て台詞」を言うような営業パーソンは問題外です。将来的には取引ができるかもしれません。その時のためにも、失注した時の対応を決めておいた方が、気持ちが楽になります。仮に契約につながらなくても、今後何かの機会に取引関係が生まれる可能性はあります。例えば、契約した会社の商品が予定した性能が発揮されない、アフターサービスの対応が悪い、売りっぱなしでその後の訪問がない。など顧客が他社と契約した後に不満を持つことは、十分考えられます。商談がまとまらなくても、BtoBセールスの場合は、今後のためにも関係の強化は続ける必要があります。商談がまとまらなかった時の対応は次のようになります。①今まで、商談していただいたことに感謝を伝える。例えば「このたびは弊社と私にとってはとても残念ですが、今までご検討していただきありがとうございました」。②最後に本当の敗因を尋ねる。お客様とある程度関係性ができていれば答えてくれます。例えば、「本当のところ、弊社がご採用いただけなかった理由は何だったのでしょうか」。③今後の訪問や提案の許可および再度検討するときは対象にしてもらうことの約束を取り付ける。例えば、「今後とも、御社のお役にたてるようなご提案をしていきたいと考えております。また何かご検討されるときは、是非とも次回も弊社にも、お声掛けください」。④次回の提案の時の対策のヒントを貰う。例えば、「次回は、私どもはどのような点に注意すれば、ご満足いただけるでしょうか」。⑤社内に戻り.結果を報告する。営業パーソンとしては辛いですが、次回は担当が変わることあります。会社に結果報告をし、商談の経緯と結果を文書化します。

契約を決断できない理由として、「私は心配症」だから言う人もいます。実は日本人は「心配性」な人が多いという説があります。理由の1つとして、日本人の生まれ持った遺伝子が関係していると考えられています。別名「幸せホルモン」と呼ばれる、セロトニンが脳内から減ると、人は不安を感じたり気分が落ち込んだりしやすいと考えられています。セロトニンの分泌量を左右するのが、「セロトニントランスポーター遺伝子」です。この遺伝子にはセロトニンの分泌量が少ない「S型」と、分泌量の多い「L型」の2種類があり、その組み合わせによって、「SS型」「SL型」「LL型」の3つに分かれます。SS型の遺伝子を持っている人は不安を感じやすい人、LL型の遺伝子を持っている人は楽観的な人、SL型はその中間の人ということになります。不安を感じやすいかどうかは、ある程度、生まれつき決まっていることになります。調査によれば、日本人の遺伝子は、SS型が65%、SL型は32%、LL型は3.2%です。一方、アメリカ人は、SS型が19%。SL型が49%、LL型が32%という結果が出ています。日本人と比較すると、アメリカ人はLL型遺伝子の人が10倍います。つまり、日本人は不安を感じやすい民族なのです。SS型は「ネガティブ遺伝子」とも呼ばれています。日本人は新しいことに取り組むのに慎重だと言われる原因の1つが遺伝子なのかもしれません。消極的ととらえれば欠点になりますが、慎重だと考えれば利点にもなります。

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