BtoBセールスの原理原則14 「C.調査活動 (Survey)」-「C3.提案の判断」

「C.調査活動」は、お客様に提案するために、まずはお客様の関心事や課題を理解します。そしてお客様から提案することの合意を得るフェーズです。「C.調査活動」の下位のレベル2は「C1.お客様の関心事」と「C2. 課題の把握」と「C3.提案の判断」の3つに分けました。「C3.提案の判断」の下位のレベル3は、「C3.1 真因を突き止める」と「C3.2 提案可能性の判断」と「C3.3 提案の承諾を取る」の3つに分けました。「C3.提案の判断」は、次の提案につなげるために、お客様と課題と原因に対して、認識の違いがないかを確認して、お客様に提案に対する期待を持ってもらうためのフェーズになります。

C3.1 真因を突き止める : 最初に、お客様に質問をして、なにが「問題・課題」と考えているか探り出しますが、よくあるケースですが、「問題・課題」が、「問題・課題を発生させている原因」ではなく、「問題・課題の現象(状態)」を表していることが多くあります。例えば、お客様は「営業の実績が思わしくない」と問題を挙げられたとします。そうした時にシステム会社は「SFAを導入して、営業活動の見える化をしましょう。」と提案します。しかし「営業の実績が思わしくない」のは現象です。「営業の実績が思わしくない」ことを発生させている原因が、「営業活動がソフトで見える化できていない事」であるならばSFAは有効ですが、「営業パーソンのスキルと知識がない」のかもしれません。「性能とコストの競争力がない」のかもしれません。「会社の知名度がない」からなのかもしれません。問題解決の世界では、「問題を発生させている原因が正しく特定されれば、問題の半分はすでに解決されている。」と言われています。「問題・課題」を発生させている真の原因を「真因」と言います。トヨタ自動車では、真因を追究するために、「問題が発生したら、なぜその問題が起きたかWHYを5回繰り返しなさい。」と教えています。因果関係を正しく把握するためには、①挙げられた「問題・課題」が「発生している現象」か「発生させている原因」なのかを見極めます。②「発生している現象」だと判断すれば、「なぜ、その問題が起きているのでしょうか?」と質問します。③「発生させている原因」を特定します。④因果関係が正しいかを確認します。「もし、その原因が無くなれば、この問題は解決しますか?」と質問します。対策は、その「真因」を解決する提案になります。SFAの例で考えれば、SFAを導入すれば「営業の業績が上がるのか?」や「他の方法はないのか」を考える必要があります。システム化しても、営業パーソンが使えこなせない。マネジャーがデータを活かせないのであれば、宝の持ち腐れです。DXで多くの業務でシステム化が加速されていますが、一番効果が出るのは「定常業務(ルーチンワーク)で、非定常業務(ノン・ルーチンワーク)をステム化で効果を出すのは難易度が高いと感じています。営業マネジャーにとって一番必要なのは、営業パーソンとの親身なコミュニケーションや有用なアドバイスや育成のための環境整備や社内調整のサポートです。システム化はかえってそれらを阻害していることもあると感じています。真因を突き止めない場合は、「対策先行型」の提案で「対処療法的な提案」なります。対策の効果は限定的になります。お客様と「真因」を突き止めるのは営業パーソンの役目です。

・C3.2 提案可能性の判断 : 提案をすることをお客様に確認する前に、質問によって以下のことを確認します。①顧客が望んでいる「ありたい姿」②顧客の現状「現実の姿」③顧客が解決したいと考えている課題。その結果から課題に対して提案を進めるか判断します。営業活動を進めるためには、基本的にはQCDの、Q「不満な点はなにか?」、C「予算はあるか?」、D「導入を検討しているか?」などを明確にします。しかし、営業活動の初期段階では、分からなかった解決が困難な問題がはっきりすることがあります。例えば、いくら顧客が課題を解決したいと考えていても。①予算を申請していない。②予算がない。③業績が悪くて新規投資ができない。④投資の優先順位が低く検討の中に入らない。⑤導入の検討時期が過ぎてしまっている。⑥自社の競合の会社との取引関係がある。⑦お客様と競合会社に資本関係がある。⑧システム商品のため、現状のソフトウェアが理由で代替ができない。などの理由で、次の提案活動に進めないことがあります。そのような、問題に対して、解決の可能性があれば、この後も提案活動を継続する価値があれます。しかし、検討した結果、解決ができないのであれば、当面は労力をかけることは無駄です。今までコンタクトをとってきたお客様をあきらめることは、営業パーソンとしてはつらいですが、早めに営業活動を打ち切る決断をして、次のお客様の開拓に向かうことが必要です。諺にも「見切り千両」という言葉があります。駄目と判断した場合は、いったん営業活動をリセットすることも営業パーソンの大切な決断の1つです。次のお客様に営業活動を考えます。
 
C1.3 提案の承諾を取る : 顧客と「問題・課題」と真因の確認ができたら、次の提案活動に進むために「提案の承諾を取る」のプロセスになります。営業パーソンが、お客様の「問題・課題」の確認後に、提案に進むことの承諾をとります。「問題・課題」の共有ができていれば、提案の許可をとるためのお客様との会話は下記のような内容になります。①課題の再確認の会話。顧客と共有した課題を再確認します。「この度は、御社の状況を色々とお教えいただきありがとうございます。私どもとしては、御社の課題は○○だと考えています。」②解決への期待の質問。課題を解決したいと考えているかどうかの質問をします。「可能であれば、その課題を解決したいととお考えでしょうか。」③次回の提案説明の許可を取る会話。「次回は、弊社が御社の課題にお役にたつ提案を考えてまいりますので、聞いていただけないでしょうか?」④懸念を解消する会話。売り込まれることを心配しているようであれば、お客様の心配を解消します。「もちろん導入いただくことが前提でなく、御社の将来の計画のご参考にもなればと思っています。いかがでしょうか?」⑥次回の訪問日(アポイント)を決める。「では次回お伺いするのは、○月○日××時ではいかがでしょうか?出来れば1時間ぐらいお時間をいただければと思います」。顧客の提案の許可を取るだけでなく、具体的に日時などのアポイントも取ります。アポイントを取ることで、顧客の中に予定が記憶されます。後でアポイントを取ろうとしたときには、顧客の都合がつかずになかなか会えなくなる、顧客の気持ちが変化して、その課題の解決に関心がなくなっていることも予想されます。顧客に訪問した時には、帰る前に必ず次回の予定を決めてアポイントを取るようします。

調査活動で確認した「問題・課題」と「真因」の認識がお客様と一致しているか確認した後に、提案活動に進みます。お客様が提案を期待しているかも確認します。その後に社内で検討し決定した対策を、お客様に提案できるようにまとめていきます。提案を作成する時は、過去の提案資料(書)が社内で共有化されていれば参考になります。提案を作成する手順は以下の通りです。①社内情報と顧客で調べた内容を整理する。顧客の現状。顧客は何に困っているか。将来の計画としてどのような要望があるのか。②自社で提案できる対策を考える。お客様が抱える課題にどのような解決策を提案するか。社内で利用できる資料やデータがないか探す。③社内で事前に相談もしくは決済を取らなくてはならないものはないか、他部門に協力を依頼しなければならないものがないかを確認する。④提案できる価格の事前の相談と決済。⑤提案の目的をはっきりさせます。一口に提案と言っても、お客様に自社を理解してもらうための提案。お客様に検討していただくための提案。検討後の導入判断をしてもらうための提案。継続的な関係強化のための提案。などあります。お客様の立場から見れば、提案を受ける目的が、社内の検討を始めるための説明資料。具体的な導入に向けて選定を絞るための資料。予算を確保するための資料。社内の稟義書類につけるための資料。など様々です。お客様が提案を受ける目的を理解しておく必要があります。顧客の目的に合わせて提案内容を考えます。例えば、予算申請のための資料であれば、今後の交渉を考えてぎりぎりの金額は提案しないなどです。

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