BtoBセールスの原理原則15 「D.提案活動(Proposal)」-「D1.対策の立案」

「D.提案活動(Proposal)」は、お客様にヒアリングした結果をもとに、提案の作成と実施のフェーズです。「D.提案活動(Proposal)」の下位のレベル2は「D1.対策の立案」と「D2. 提案の実施」と「D3.提案後の活動」の3つに分けました。「D1.対策の立案」の下位のレベル3は、「D1.1 真因から考える」と「D1.2 ギャップ分析で考える」と「D1.3 系統図で考える」の3つに分けました。「D1.対策の立案」は、次お客様に、導入を検討していただくための訴求力のある提案を実施するためのフェーズになります。
検討した対策案から、顧客の課題の解決につながり、実現可能性の高いものを選択します。対策を選択する基準には以下のようなものがあります。①実現性はあるか?②実現の難易度はどうか?③効果は十分にあるか?③費用対効果は高いか?④自社の優位性はあるか?⑤顧客の希望にこたえられるか?⑥競合と差別化は出来ているか?⑦お客様の「ありたい姿」の実現に寄与できるか?などが実現できる提案を検討します。対策を考える手法を3種類挙げました。大きな違いはありません。考えやすい手法を使えばよいと思います。多人数で考える時は、ポストイットを使用した系統図が使いやすいと思います。

D1.1 真因から考える : 「調査活動でお客様と合意できた、「問題・課題」を発生させている真の原因(真因)をベースにして対策を検討します。ポイントは、①自社の強みや優位性で、対応可能な対策に絞ります。②真因を3つに絞ります。1つでは、対策の提案としては物足りないです。4つ以上では、お客様が頭の中で整理するのには多すぎます。優先順位が不明確になります。弊社の営業研修の例であれば、お客様が挙げられた課題が、「営業の売り上げ目標の未達」に対して、真因は、「営業パーソンのスキル不足」と「社内の営業活動の標準化がされていない」と「顧客情報が何もない」で合意されたとします。であれば、弊社が提案できる対策は、「研修による営業スキルの学習」と「組織内営業プロセスの標準化」と「顧客情報や営業活動のDB化」が提案できます。しかし、仮に「SFAを導入する」ことが対策であれば、ベンダーさんを紹介することは可能ですが、自社ではできません。自社のリソースで差別化でき、真因が解決され、最も効果が見込める対策を提案します。

D1.2 ギャップ分析で考える : ギャップ分析とは、「ありたい姿(To be)」と「現実の姿(As is)」のマイナスのギャップから、お客様の「問題・課題」を抽出する分析方法です。その抽出された「問題・課題」に対して、対策を検討します。その分析した結果が正しいかはお客様に確認します。営業パーソンが、顧客を分析して考えた課題の仮説が本当に合っているかどうかは、社内の顧客データやネットで調べたり、他の営業パーソンに聞いてみることはできますが、やはり直接顧客に確認することが一番確実です。ギャップに対して顧客が重要でないと考えていれば、提案する必要のない「問題・課題」です。
まずは、①確認したいことを質問するのに適切な人にアポイントを取って質問します。②顧客の「ありたい姿(To be)」を確認します。③「現状・将来の予想される姿(As is)」を確認します。④2つの間に生じる問題(課題)を確認します。⑤なぜそのギャップが発生するか質問します。⑥その発生原因に対して解決できる対策を検討します。

D1.3 系統図で考える 系統図による分析方法は、課題から対策を構造化して考える対策先行型と、課題を原因に読み替えて構造化する原因追求型があります。対策立案では原因追求型のアプローチの方が効果的です。原因追求型は課題の発生原因が特定できるまで、なぜなぜを繰り返して、対策が打てる規模の原因になるまで分析します。そして問題の発生原因への対策を検討します。原因追求型のポイントは課題の発生原因が、対策が実施できる一つの要件になるまで分解します。上手くいかなかったことに対する原因追求を展開していきます。そして最終的に課題を発生している根本的な原因が追究できたら、対策を検討します。対策を実施する際には、具体的に、どの原因に対してどの対策を行うか分かるようにしておきます。ステップは、①目的をお客様の課題から持ってきます。お客様と共有した課題は、目標の未達か未達の予測です。「悪さ加減」を表しています。それを最重要課題として位置づけ左端に書きます。例えば「○○の売り上げの未達」です。②重要課題の一次展開として発生原因を挙げます。なぜ「上手くいかなかったのか」のように発生の原因を展開します。例えば、「既存商品の価格の下落」を一次原因とします。③二次展開として、原因追求をします。上手くいかなかった原因をさらに「なぜ(Why)その原因が起きたのか」を原因の追及を展開していきます。例えば、「競合品の値引き」「既存商品の競争力の減少」などになります。④さらに三次四次と原因追求をしていきます。⑤最終の原因に対して対策を決定します。最終の原因に対して、原因の解決が実現可能な対策に落とし込めるところまで展開して、具体的な対策を決定します。

提案で正しい対策の設定を阻む要因は、いくつかあります。代表的な要因をあげます。①「問題・課題」の裏返しを対策とする。例えば、「営業力が弱い」問題に対して。対策は「営業力を強くする」。これでは何も具体的な対策になっていません。しかし、こうした対策は、意外なほど多く見かけます。② 対策の効果が検討・検証されないまま対策が実施される。例えば、「会社の販売不振」という現象から、「競合より営業整員が少ない」ということから、検証もせずに「営業人数の不足による販売不振」を原因として設定し、そこから「営業パーソンの補充」を対策とします。しかし販売不振の原因が、「営業人数の不足」であるかどうかの検証はされていません。人件費の増加により、かえって業績が悪くなることもあります。③対策が、「あるべき姿の実現」から対策を導いていない。例えば、「ある衣料品メーカーが、アイテム数が増え、在庫が増大している。少量多品種になり、物流コスト、管理費が増大して利益を圧迫している。」という問題設定がされた場合、「在庫管理をうまく行う」という対策から、解決策として、「ソフトを導入してシステム化して効率的に在庫管理ができる仕組みを作る」になります。しかし利益の増大が「ありたい姿(理想像)」ならば、販売実績や在庫の回転率から判断すると、アイテム数を増やしすぎたことが、利益を減らしている原因だと判断された場合は、解決策は商品数を絞り込むことになります。④手段を限定してしまう。自社で可能なこと、簡単にできることで対策を考えてしまう。目的の達成のために何をすることが本当に必要なのかを考えていない。例えば、昼までに、東京から大阪に行く手段を、新幹線に限定した場合は、可能な本数、時間は限られてしまいます。仮に新幹線が止まった場合は、大阪に行く手段がなくなってしまいます。しかし、大阪に行くことが目的であれば、手段はレンタカーや夜行バスや飛行機やヒッチハイクを検討することも可能です。」
正しい「問題・課題」の設定から、それを発生させている真の原因(真因)を突き止めて、その原因に対して有効な対策を打つ。企業の「ありたい姿(理想像)」を実現するためには、どのような対策が打てるかを、出来るだけ制約を無くして自由に発想することが、「問題・課題」の解決につながります。

カテゴリー: エッセイ   この記事のURL