雑筆51 不愉快なニース㉑ 質素倹約

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」 。これはドイツの鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの格言です。賢い人は歴史からどうしたら失敗しないかを学ぶことができるが、愚かな人は、自分で失敗して初めて失敗の原因に気づき、その後に同じ失敗を繰り返さないようになるという意味です。私は「愚か者」ですから、歴史から成功や失敗の教訓を学ぶことは難しいです。失敗した経験から、学ぶこともありますが、同じ間違いを何度も繰り返してしまうことも多いです。ですので「愚者」の上の、「超愚者」か「スパー愚者」だと自覚しています。地球上から、いつまでも「戦争や貧困や飢餓」が亡くならないのは、人類全体が「愚か」なのか「進化の途中」なのか、そもそも「残酷な生き物」なのか考えてしまいます。狩猟などで「楽しみのために、生物を殺すのは人間だけ」との文を読んだことがあります。他の生物は、生きるためにだけに他の生物を殺します。ニューヨークの「ブロンクス動物園」には、「世界でいちばん凶暴な動物」という表示があって、 そこを覗き込むと「鏡」に自分が映ります。3/1のニュースに「ガザ援助待ち市民に発砲か、100人超犠牲との情報 10月以降の死者3万人超」。パレスチナ自治区ガザの保健当局は29日、イスラエル軍がガザ市近郊で援助物資を待つ人々に砲撃し、少なくとも112人が死亡、280人が負傷したと発表した。保健当局はまた、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まった昨年10月以降の死者が3万0035人に達したと明らかにした。負傷者も7万人を超えるという。こんな残虐行為が許されていいのかと憤ります。人類は、世界は、こんなことすら止めることができません。

かつて日本人の美点に「質素倹約」の精神がありました。 「質素」は、「飾り気がなく、生活が贅沢でないこと」。「倹約」は、「無駄を省いて、出費を少なくすること」。ですから「飾り気がなく、慎ましく暮らすこと」です。 「自民党と財務省」は、今や「庶民の敵」とも言える存在です。税金を好き勝手に、使いたい放題使って、足りなくなれば「赤字国債」を発行して、「国家財政の破綻の危機」などと、マスコミを使って国民を洗脳しています。赤字を作っているのは財務省です。官僚や政治家の思考は、万博のお金の使い方にも端的に表れています。2/15のニュースでは、「去年12月19日にはいったん約1113億円との素案を公表しましたが、今回は府・市の新年度(2024年度)当初予算案などが固まったことから、追加分を精査して反映し現状で約1325億円とする見通しを15日に発表」。最初から予算の中で収めようとは、露ほども考えていません。大阪万博の会場建設費が、当初の約2倍となる2350億円まで膨らんでいます。そんな中、若手建築家が設計する2億円のデザイナーズトイレが、40カ所の公衆トイレのうち8カ所に設置されるという。これは2億円×8か所=16億円に32か所のトイレ施設の費用がかかるということでしょう。それ以前には、当初予定になかった350億円の日よけのリングを建設中です。半年のイベントのために無駄なことばかりします。経済効果があるなどと詭弁を弄していますが、政治家お得意の論点のすり替えです。庶民は野放図に拡大していく費用に納得がいかないのです。さらに2/27のニュースでは、「大阪府松原市は、2025年大阪・関西万博の入場券を購入した18歳以上の市民に対し、同市から会場の夢洲(大阪市此花区)への往復交通費の半額に相当する1千円分の補助を行う。松原市民が万博入場券を購入する際に割引される形で補助できるよう、万博協会や府といった関係機関との間で調整を進めるという。4~17歳の児童・生徒らには府の意向に沿い、市の負担で万博へ2回目の無料招待も行う方針。万博会場で同市の魅力をPRする催事の準備費用なども合わせ、万博関連事業費として令和6~7年度に約7388万円を計上する」。と良いことのように書いていますが、それら補助もすべて税金です。そこまでして集客したいのでしょう。私の周りの東京に住んでいる人の意見は、「わざわざ万博に行く気はまったく起きない。」です。悲惨な結果になる可能性があります。

・歴史に見る、財政立て直し。

鎌倉幕府5代目の執権・北条時頼は、いわゆる名君と呼ばれた人々の祖型といえます。政治で示した「仁愛、公平、質素倹約」などをはじめ、積極的に日本全国を回国行脚して地方の実態を把握したことからも、後の「水戸黄門漫遊記」の原型をすでに実行していたといっていいです。権力の座にありながら、その質素な生活ぶりは数々伝えられている。ある日、時頼は母に招かれ母の家を訪れます。すると、母は障子の切り張りをしていました。松下禅尼の兄の義景が、「そのようなことは誰かにやらせます」というと、「私より上手に貼れる者はいないでしょう」 といって、障子の破れたところのみを丁寧に張っていたそうです。それを見た義景は、「全部張り替えた方が簡単ですし、見栄えも良いでしょう」 というと、 「今日はわざとこうしておくのです。物は修理して使うものだということを時頼に教えるためです」 と答えたのだといいます。母の松下禅尼に、障子の切り貼りを教わり、あるいは突然訪ねてきた客をもてなすのに、大した肴がないので味噌だけで酒を振舞ったといいます。これは別に誇張ではなく、時頼は、祖父の北条泰時にもそういうように育てられていました。

・江戸時代、日本は世界最大の金・銀産出国でした。しかし17世紀後半に金銀の産出量が一気に減少し、さらに算出した金銀もほとんどが海外へ流出したため、江戸幕府は一気に財政難に陥ります。そこに登場したのが江戸幕府第8代将軍「徳川吉宗」です。徳川吉宗は、自ら指揮を執って庶民、幕閣に倹約を強いただけでなく、新田開拓、商品作物の栽培推奨によって農業を盛んにし、税収も増加させます。こうして江戸幕府の財政を立て直すことに成功。この功績により、人々は徳川吉宗を「江戸幕府中興の英主」と称えました。これは「享保の改革」と言われています。徳川吉宗は、自ら木綿の服を着て「質素倹約」を率先して実施。食事も粗食を1日2食という生活を続けていた。藩主がそのような服装をしているのですから、家臣達が贅沢な服装などできるはずもありません。収入を増やすのではなく、支出を減らすことの方が、迅速な財政改革を進められると考えた。他にも徳川吉宗は、次々とユニークな制度を発表していきました。ある日、徳川吉宗は大奥に対して「美女50名を選抜せよ」と命令。役人は江戸幕府将軍の好色ぶりにあきれながら名簿を提出すると、徳川吉宗はなんとその50名を解雇してしまいました。理由は「美しい女性なら、大奥を出ても良い家の縁談があるから」。このように、徳川吉宗は自ら率先してすべての部署に倹約を命じます。こうして一気に江戸幕府の支出は抑えられていきました。

二宮尊徳(通称「金次郎」)は江戸時代後期の経世家、農政家、思想家です、日本の協同組合運動の先駆けとして、江戸時代後期に報徳思想を唱え、報徳仕法と呼ばれる農村復興政策を指導しました。 「至誠・勤労・分度・推譲」を行っていくことで、人は初めて物質的にも精神的にも豊かに暮らすことができるというのが報徳の根本的理論です。二宮尊徳教えはすべて「至誠」が根底にある。 「勤労(きんろう)心身を労して懸命に仕事に励むこと」。「分度(ぶんど)自分の経済的状況に応じた範囲内で、身の丈にあった生活をすること」。 「推譲(すいじょう)将来へ向けた貯蓄をし、また他者や社会のために一部を譲ること」。これは二宮尊徳の経営再建の思想です。もともとは中国の古典「礼記・王制」に国家の経営思想として登場する言葉です。「入るを量りて出ずるを為す」。要は「収入を計算して,それに見合った支出を心がける。」ことです二宮尊徳は、以下のように贅沢は生涯の大損ということを説明しています。「いくら財産が豊かで位が高くても、質素に暮らし、驕った贅沢な生活を家法の中で厳しく禁じておかなければならない。なぜなら、奢侈は、欲望によって利を貪る気持ちを増長させ、慈善の心も失わせてしまう。そして自然に欲深くなり、ケチくさくなって、仕事の上でも不正を働くようになり、その結果、災いも生じてくるのである。これは恐るべきことだ」。二宮尊徳の報徳の思想は、渋沢栄一、安田善次郎、鈴木藤三郎、御木本幸吉、豊田佐吉といった明治の財界人・実業家や、松下幸之助、土光敏夫、稲盛和夫といった昭和を代表する経営者たちにも多大な影響を与えたといわれています。二宮尊徳さんが残した多くの名言の中に「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」というのがあります。渋沢栄一氏の著書『論語と算盤』の中にも「会社経営において、利益は大切ですが、そこに理念がなければ犯罪なのです。理念は大切ですが、利益がなければ寝言なのです。」と書いています。最近のニュースを見ていると、「日本は理念なき国家。赤字(国債)だらけの国家」だと感じてしまいます。

・2010年1月19日、日本航空(JAL)は経営破綻した。戦後最大の負債を抱えて倒産した巨大企業。「もはや再建は不可能」との声に、京セラの名誉会長だった稲盛和夫氏は、役員報酬なしで会長に就任。 従業員の意識を改革し、見事にJALを再建しました。1年後に過去最高の1800億円、2年後には2000億円を超える営業利益を上げる超V字回復を遂げました。当時は航空業界の知識はほとんどなく、再建の自信もなかったといいます。「入るを量って出ずるを制す」。稲盛氏がJALの会長に就任した際に語った言葉です。「売上を最大に、経費を最少に」を現実のものにするために数字による経営を行いました。JALの経営破綻の直接的なきっかけはリーマンショックによるものですが、経営破綻原因は、国内路線において赤字路線が多くあったこと、またコスト面においても手厚い企業年金や福利厚生など社員への処遇が手厚すぎた点。本業以外のホテル・リゾート開発(1300 億円の損失)や、破綻直前の 2008 年の原油先物買い(1900 億円の損失)、日米貿易摩擦解消のためのジャンボ機の大量 導入(一機 200 億円を 113 機導入)、地方空港の乱造と高い公租公課(着陸料など)、政治家の 圧力での不採算路線への就航などが挙げられています。ネットのサイト「稲盛和夫OFFICIAL SAIT」に「倹約を旨とする」。私たちは余裕ができると、ついつい「これくらいはいいだろう」とか、「何もここまでケチケチしなくても」というように、経費に対する感覚が甘くなりがちです。そうなると、各部署で無駄な経費がふくらみ、会社全体では大きく利益を損なうことになります。そしてひとたびこのような甘い感覚が身についてしまうと、状況が厳しくなったときに、あらためて経費を締めなおそうとしても、なかなか元に戻すことはできません。ですから、私たちはどのような状態であれ、常に倹約を心がけなければなりません。出ていく経費を最小限に抑えることは、私たちにできる最も身近な経営参加であると言えます。」と書いています。

税金で海外旅行をして豪華な食事をとる。パーティー券のキックバックで贅沢な暮らしをする。政治家は「質素倹約」に一番遠い存在です。「財務省と政治家」の思考は、「出ずるを量って、入るを増やす」。です。考えていることは、私利私欲で「税金を使いたい放題使って、足りない状態にして、増税する」です。一般会計の5倍もある「特別会計」とシロアリと呼ばれている「特殊法人」にメスを入れない限り、「財政再建」なんて、夢のまた夢です。マスコミは話題にすらしません。マスコミは「報道しない権利」を行使して、国民にとって本当に大切なことは報道しません。

余談:1/23(火)にアリの街実行委員会主催の、言問橋の近くにある隅田公園で、北原怜子さんの66回忌の追悼式に参加してきました。隅田公園は、かつて怜子さんが移り住み、そこに住む子どもたちのために献身的な活動を行った「蟻の街」があった場所です。園内には、それを記念して案内板も設置されています。追悼式には主催者も含めて20名で怜子さんを偲びました。ささやかな式ですしたが、怜子さんへのそれぞれの思いが感じられた素晴らしい式でした。3/10(日)11時~12時30分に浅草公会堂で、「言問橋の惨状から蟻の町の誕生へ」記録作家 石飛仁氏の講演と資料展示(10時~16時)があります。無料です。東京大空襲では、東京の区部が被害を受けた空襲は60回を越えます。 確認された死者の遺体数は約10万5400人になります。 負傷者は約15万人で、罹災者は約300万人、罹災住宅戸数は約70万戸です。 焼失面積は約140㎢で、区部の市街地の約50%、区部面積の約25%に当たります。北原聡子さんは「蟻の街のマリア」と呼ばれ、終戦後の「戦争孤児」などの面倒を見ていました。奉仕活動での体力的無理が祟り著しく健康を害し、療養のため「蟻の町」を離れましたが、やがて死期を悟ると「蟻の町」に再び移住。1958年腎臓病で亡くなりました。28歳没。墓所は多磨霊園にあります。父母両家の実家のお墓があり、私は年に一回お参りをしています。クラウドファンディングで墨田公園に「ゼノ神父と北原怜子さん」の銅像が建てられればと願っています。

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