試練 LM61

子供のころに読んだ漫画「巨人の星」の中に、安土桃時代の戦国武将、山中鹿之助が「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」と月に祈った話が載っていました。今でもなぜ覚えているかというと「あり得ない。意味わからない」「平穏無事な人生が一番」と子供心に強く思ったからです。それでも僕の人生にも人並みに谷や山はあります。「試練は人を強くする」と言います。確かにそういう面はあります。かといって進んで苦労したいとは全く思いません。それでも避けられない試練に会うことはあります。そこでめげていてもしょうがないので、良い面も考えるようにしています。 
1) 抵抗力が付く。人生がいつも順風満帆な人なんていません。誰でも多かれ少なかれ問題は抱えます。僕は社会人になってからでも、オイルショック、バブルの崩壊、リーマンショック、東北大震災など、仕事に影響のある出来事に何回も遭遇しました。経験から悪いことは何時までも続かない、何時かはきっと良い時が来ると信じられます。それまで凌げば何とかなると思えます。初めて今回のような出来事に遭遇した社会人よりは少しは心の余裕があります。何度も経営危機に陥っている「銚子鉄道」を取り上げた番組で村上龍さんが「社員の皆さんに悲壮感が無い」と言うと「痛みを感じ続けて耐性ができた」と社長は苦笑いしていました。
2) 退屈しない。人の脳は、同じ刺激を3年受けると刺激に対して反応が弱くなるという説を読んだことがあります。最初は夢中になったゲームでも飽きて興味がなくなるのは、そうした脳の働きです。僕は飽き性なので、同じ仕事を3年ぐらいやると無性に飽きます。自発的に新しい事をやる、環境を変えることは勇気が必要ですが、世の中の環境が大きく変わる時には、自分も変化せざるを得ません。研修をしていますが、5ヵ月前にはまさかリモートで研修をやるとは夢にも思いませんでした。大急ぎでZoomなどを勉強して、内容をリモート用に変更するなど対応しました。慌ただしかったですが、なんか楽しかったです。もっとゆっくり来るはずの変化が一気に起こりました。個人には大変ですが、社会全体では良い変化です。インターネットが当たり前になったように、これからはリモート会議や学習が当たり前になります。「銚子鉄道」の社員の皆さんは大変な苦労をしてきていますが、目は生き生きとしています。死んだ魚のような眼をして生きているよりは、ずっと幸せです。退屈な人生では生き甲斐がありません。余談ですがビジネスを僕ならどう展開するかを考える習慣があります。「銚子鉄道」は僕ならJR東海にお願いして、品川の駅ナカに小さなアンテナショップを出展させてもらいます。新商品は「濡れ手に粟煎餅」なんてどうでしょうか。潰れそうで潰れない会社ですから、ある意味縁起が良いです。
3) 人生を見直す機会になる。3、4、5月と研修が全て中止になりました。芸人さんが自粛で仕事が一切なくなったのを聞くと、めちゃ共感します。僕の仕事は芸人さんと同じだと思いました。芸人さんがリモート出演のために新しい芸を磨いている姿に刺激されます。時間がたっぷりあったので自分を見直しました。これまでの仕事や人生、これからの仕事や人生についても考えました。これまで僕は何のために仕事をしてきたのだろうか?お客様や社会の役には立てたのだろうか?これから何が出来るのだろうか?そもそも僕は存在する価値はあるのだろうか?祈りにも近い気持ちで、自分に問いかけています。そんなことを考えるきっかけが持てたのは、今回の自粛があったからです。

カテゴリー: エッセイ   この記事のURL