プロジェクトマネジメントの原理原則7 計画プロセス群2 資源マネジメント、スケジュール・マネジメント1

立上げのプロセスで、最終成果物を決め、次に計画のプロセスで成果物を作り出すための活動をWBS(WP)で洗い出しました。次に多くのプロジェクトはチーム作業ですから、各WPを誰が担当するかを決めます。役割担当を決める知識エリアは「資源マネジメント」です。PMBOK第5版までは「人的資源マネジメント」でしたが、組織の人的資源以外の物的資源を含む内容に変わり「資源マネジメント」になりました。「資源マネジメント」は、プロジェクトを成功裏に完了させるために必要な資源を特定し、獲得しマネジメントします。「資源マネジメント」の計画プロセスは「資源マネジメントの計画」と「アクティビティの資源見積り」になります。「アクティビティの資源見積り」は、PMBOK第5版では、タイム(スケジュール)・マネジメントの知識エリアにありました。個人的には人に特化した前の「人的資源マネジメント」の方が分かりやすいです。
・資源マネジメントの計画 : 人的資源、物的資源を見積り、獲得し、活用する方法を定義します。「ツールと技法」で紹介されている、責任分担表(RAM / Responsibility assignment matrix)は、活動(WP)と人を結びつけ、全ての活動が個人やチームに割り当てられている表です。プロジェクトで使われる標準的な帳票です。PMBOKではRAMの一例としてRACIチャートで「Responsible・実行責任者, Accountable・説明責任者、Consulted・相談先、Informed・報告先」に役割を分けています。私は「Responsible・実行責任者, Support・メンバー」の2つは絶対。必要であれば「Expert・専門家・経験者、Informed・報告先」の役割分担をお勧めしています。
・アクティビティの資源見積り : 作業に必要な人的資源、物的資源、装置などの数を見積もります。アクティビティ(Activity)とは「活動」の意味です。WP(ワークパッケージ)の活動を詳細化したものを表します。例えは「イベントプロジェクト」のWPの「カタログを作成する」のアクティビティは、カタログの「デザインを決める」「原稿を作成する」「印刷をする」「冊子を作る」のように分けることができます。個人的な意見ですが、アクティビティは、WPのチーム内で活動や役割を考える時やコストを見積もるときには必要な時もありますが、プロジェクト全体でのスケジュールや役割分担を考える時には、アクティビティ・ベースでは細かすぎると考えています。WPベースで考えることをお勧めしています。この時点でのプロセスで必要な作業は、プロジェクトで「役割分担表」を作成することです。その時に重要なことは、WP(作業)ごとに、メンバーの中から必ず1名責任者を決めることです。責任者はWPの進捗に責任を持つとともに、プロジェクト・マネジャーへの報告業務および何か問題が起きたときには相談します。日本はありま責任者を任命したがりませんが、米国では「仕事の内容、役割、責任、権限、期間、報酬」などを明確にすることは当たり前の文化です。「アクティビティの資源見積り」で、作業を完了するために必要なものを決めるのは、コストの見積りや調達の作業に必要です。
・立上げのプロセスで成果物を決めて、成果物を作り出すための作業を洗い出したら、つぎは、プロジェクトのスケジュールを作成してプロジェクトの期間を見積ります。計画プロセスの「スケジュール・マネジメント」の知識エリアです。「スケジュール・マネジメント」は、プロジェクトを計画した時間で完了させるためのプロセスです。「スケジュール・マネジメント」の計画プロセスは、「スケジュール・マネジメントの計画」「アクティビティの定義」「アクティビティの順序設定」「アクティビティ所要期間の見積り」「スケジュールの作成」になります。プロセスが5つあるのは他にはリスク・マネジメントだけです。
・スケジュール・マネジメントの計画 : スケジュールを計画し、策定し、マネジメントし、実行し、コントロールするための方針、手続き、文書化します。
・アクティビティの定義 : WPの詳細の活動を定義する。アクティビティの集合体が、1つのWPであるため、全体のプロジェクトのスケジュールはWPベースが実務的です。
・アクティビティ所要期間の見積り : 実務ではネットワーク図を作る前に、WP(ワークパッケージ)の所要時間を見積もります。時間の概念には2種類あります。「作業工数・作業量(Effort)」と「所要期間(Duration)」です。「作業工数・作業量」とは、人工、人日、人週などと表現されることもあります。その仕事の完了のために必要な時間の総量のことです。分かりやすく表現すると、1人でその仕事をしたときにかかる時間です。「所要期間」とは、その作業に、要員や装置などを投入した時にかかる仕事の期間です。例えば、1人で3週間かかる作業を、3人で実施して所要期間を1週間として見積もるというようなことです。人件費を算出するときには「作業工数・作業量」が必要ですし、プロジェクトの期間を見積もるときには「所要期間」が必要です。実務では時間に関する見積りは難しいです。例えば、上記のように3人で作業をといも必ず所要期間が3分の1になるわけではありません。同じ作業を3人でやるとしても、メンバーのスキルやキャリアやモチベーションにも影響されます。また作業工数の根拠になるデータがないことも多いです。時間管理に関しては「コミットメント(約束・責任・宣言)」をメンバーからもらうことが重要だと言われています。例えば、プロジェクト・マネジャーがメンバーに「この作業は1週間でやってください」と言うより、メンバーから「この作業は1週間でやります」と言ってもらった方が実現の可能性が高いです。心理学では「人は自分が言ったことは守ろうとする」と述べています。PMBOKでは、見積り手法として「類推見積り」「パラメトリック(係数)見積り」「三点見積り」「ボトムアップ見積り」が挙げられています。最も一般的なのは「過去の似たような作業から推測して作業工数、所要期間を見積もる「類推見積り」です。金額見積りでは、過去の似たような作業の金額見積りを参考にして見積もることはよくあります。時間に関しても過去のデータがあればかなり参考になります。私の知っているITメーカーは、ソフトウェア開発の標準作業時間が決まっていました。過去のデータがない場合は、とりあえず予測で時間を計算して、終了時に結果のデータが蓄積していけばデータの信頼性は増していきます。

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