プロジェクトマネジメントの原理原則13 終結プロセス群、終わりに

・終結・プロセス群は、統合マネジメントの知識エリアの「プロジェクトやフェーズの終結」の1つだけです。プロジェクトが完了せずに途中で中止になっても、あらかじめ決められた完了手続きに沿って終結させます。
・統合マネジメントの終結・プロセスは、「プロジェクトやフェーズの終結」です。プロジェクト憲章によって公式に開始されたプロジェクトを公式に終了させる手順を定義しているプロセスです。プロジェクトの終結に際しては、以下の5つの手続きが発生します。①事務終了手続き「プロジェクト記録の収集、プロジェクトの成功や失敗の分析、教訓の収集、組織が将来使用するためのプロジェクト情報の保管などの活動が含まれます」。②契約終了手続き「全ての作業が満足行く形で完了したかの確認、最終結果を反映する契約記録の更新、将来のための情報の保管が含まれます。プロジェクトの最終プロダクト、サービス、所産を公式に受け入れ、契約条項のとおりであることを示す公式文書の受理も含まれます」。③会計処理終了手続き「プロジェクトで使用したコストの集計や請求の支払い手続き、会計帳簿を閉じることが含まれます」。④備品関係の終了手続き「プロジェクトで購入した装置や備品などの移管作業や廃棄処理、借りているものであれば返還手続きが含まれます」⑤メンバーの終了手続き「プロジェクトにおける評価、報奨などの手続き、次の部署への移動手続き、引継ぎ文書などが含まれます。元の組織に戻る人もいれば、新しいプ
ロジェクトに任命される人もいます」。終了に際しては事後の振り返りを行います、プロジェクトマネジメントの最終ステップであり、終結のプロセスにあたります。「プロジェクトマネジメント計画書」を整理してまとめ、DBで閲覧可能にして保管します。ます。プロジェクトチームでこれまでにあったことを振り返り、評価をします。その成果物が経営陣に対するプロジェクトの最終報告であり、今後のプロジェクトへの貴重な参考となります。プロジェクト終結の際、プロジェクトで得られた教訓などを記録した文書を PMBOK第6版では「教訓登録簿」と呼んでいます。

・成長企業のプロジェクトの対応 : 業績が伸びている企業のプロジェクトへの対応の特徴は大きくは3点あります。①プロジェクトを短期集中で終わらせる。そのために必要なリソース(人・ものお金)を投入する。お世話になった携帯会社は「高速の仕事術」として、プロジェクトのスピードアップをしていました。例えば、他社なら1年ぐらいかかるプロジェクトを半年ぐらいで計画していました。②プロジェクトの撤退は素早く決断する。ユニクロの柳井氏の著書に「1勝9負」があります。多くの失敗をしてきましたが、見込みのないプロジェクトからは損失が大きくなる前にすぐに撤退しました。逆の例として「国産旅客ジェット機プロジェクト」は、何回もプロジェクトが延長され、結局、市場にリリースできないまま中止になりました。早期に撤退していれば損失額は少なかったはずです。撤退の判断を難しくしているものに、「サンクコスト(Sunk Cost/埋没費用)があります。サンクコストとは、経済行為に投じた費用のうち、その経済行為を途中で中止、撤退、白紙にしたとしても、回収できない費用のことです。したがって将来に関する意思決定をする場合、サンクコストは考慮に入れず、今後の損益をだけを考えるのが合理的な判断です。しかし、それまでの投資によって失った費用や労力を惜しみ、もうすこしやれば上手くいくかもしれないと考え投資を継続することがあります。これを「サンクコスト効果(Sunk Cost Effect)」といいます。撤退の決断を難しくしています。投資の世界では「見切り千両」「損切り」という言葉もあります。プロジェクトを中止にしない限り「失敗プロジェクト」が明るみに出ないのもなかなか撤退を決断しない一因かもしれません。③プロジェクトの責任は追及しない。企業のトップの経歴を見ると「プロジェクトで会社に大きな損失を与えた人」が多くいます。その時の上司の器量が大きくて救われています。その結果「損失を挽回したい」「汚名を晴らしたい」「会社に恩返ししたい」という気持ちで頑張った結果、会社のトップまで上り詰めたのかもしれません。上司が自身の責任回避のため担当者に責任を取らせしてやめさせることは、それまで投入したリソースをドブに捨てるだけでなく、その人の失敗の貴重な経験も企業から失われてしまいます。プロジェクトで企業が何も得ることがないまま損失だけが残ります。この3点は、企業として重要だ思いますので、もう一度まとめます。①プロジェクトは短期集中で実行する。②見込みのないプロジェクトは早期に撤退する。③失敗プロジェクトの責任は問わない。です。

終わりに : 今回、「PMBOK第6版」をベースに、私が実施している「プロジェクトマネジメント研修」をまとめました。PMBOKの内容は、各知識エリアのプロセスのインプットとアウトプットが時系列を無視して複雑に関連している内容ですので混乱しやすいです。PMBOKはあくまでもガイドブックですので、その通り実施しないとならないものではありません。「PMBOK第6版」のプロセスに沿って書いてありますが、プロセス名などは、整理のために書いてあるだけですので、PMP試験を受ける方以外は覚える必要はありません。実際研修では、活動内容(段取りと手順)と超費用の書き方の講義と演習と発表をメインに実施しています。プロセス名やインプット、ツールと技法、アウトプットは説明していません。活動の内容が理解できれば充分です。「プロジェクトマネジメントの原理原則」の内容も、実務的で最も実行しやすい順番でプロセスを書いています。あくまでも1つのセオリー「定石」です。定石(段取りと手順)の決まっていない仕事は一件一葉になってしまい、属人的で効率が悪い上に、組織として標準化も共有化も出来ません。共通言語化されていないプロジェクトの弊害は、まず「どうやって進めていこうか」と延々と方法論を議論しています。プロセスも決まっていませんから、何時までも先に進まずに行ったり来たりしています。手法やドキュメントも決まっていませんから、結局まとまらないまま、プロジェクトが破綻します。他人ごとのように書いていますが、そんな経験もしてきました。現在のところ、目標達成や成果物の完成のための「プランニングのスキル」としては、プロジェクトマネジメントが1番体系化されてまとまっています。世界的にも共通の知識としても広まっています。プロジェクトマネジメントの知識は、企業の組織力強化のために有効だと信じています。実際、導入した企業の多くは業績が伸びています。

「プロジェクトマネジメントの原理原則」を冊子にして、HPよりフリーでDLできるようにします。少しお待ちください。よろしければご覧ください。プロジェクトで悩まれている方のお役に少しでも立てば幸いです。

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