事業創出の原理原則11 戦略の立案-顧客視点の5C分析とPEST分析

「SWOT分析」で、自社の「強みと機会」を明確にして、そこから「STP分析」で、ターゲットの市場と「顧客提供価値」を決め、マーケッティングミックスの「4P分析」と「4C分析」で、具体的な施策を決めていきます。「4P分析」は、「自社目線」での事業の検討になります。「4C分析」は「顧客目線」の分析になります。「自社の事業の強化と拡大」を考える時には、自社の「強みと機会」を生かすことを基準にして検討します。

「STP分析」での「事業」の検討は、どちらかと言うと、自社の経営状況が、比較的良好で余裕のある状態の時に行われます。しかし、良い状態ではなくて、根本的に「事業を見直さなければならない」場合もあります。事業を大きく見直さなければならなくなった原因は、自社が提供している「顧客提供価値」が、顧客が期待している「提供価値」から乖離しているからです。この状況で事業を考える必要があるときは、「自社目線」から「顧客目線」への大きく発想の転換をする必要があります。顧客を中心にして「市場全体」を見る方法の1つとして、前職の会社では「5C分析」を行っていました。

 

・5C分析 : マーケッティングの「3C分析」は、「自社(Company)」「顧客(Customer)」、「競合他社(Competitor)の3つの要素で構成されたフレームワークです。内部環境である自社と、外部環境である競合他社・顧客の3つの要素から分析を行います。「3C分析」を用いることで、競合の動向と市場のトレンドを把握し、自社の今置かれている状況を理解することが可能です。「5C分析」と言われるものには、様々な種類があるようですが、私の「5C分析」は、前職の会社で使っていた、通常の3Cプラス、顧客の競合(Customer‘s Competitor)と顧客の顧客(Customer‛s Customer)の2つのCを加えた「5C」になります。自社に競合と顧客がいるように、顧客にも競合と顧客がいます。

 自社(Company)」、「顧客(Customer)」、「競合(Competitor)」の「3C分析」は、自社から見たときの「顧客」と「競合」ですので、「自社目線」の視点になります。「自社(Company)」と「競合(Competitor)」の概要や強みと弱みと、売り上げとシェア。「顧客(Customer)」の概要やニーズ、成長性や成熟度、強みと弱みを判断します。

顧客視点の「顧客(Customer)」顧客の競合(Customer‘s Competitor)と顧客の顧客(Customer‛s Customer)の「3C分析」は、「顧客(Customer)」と「顧客の競合(Customer‛s  Competitor)」の概要や売り上げとシェア、強みと弱み。「顧客の顧客(Customer‛s Customer)」の概要と期待とニーズを考えます。「顧客(Customer)」を中心に置くことで、全体で「5C分析」になります。自社の「課題や問題」は、自社を起点とした「3C分析」で分かりますが、「顧客」の「課題や問題」は、顧客を起点とした「3C分析」でしか分かりません。

 

「PEST分析」 : 「5C分析」は、顧客を中心に置いた市場環境の「ミクロ分析」になります。市場全体の「マクロ分析」をするときは、「PEST分析」を使っていました。「PEST分析」とは、市場全体を取り巻く外部環境が、現在もしくは将来的にどのような影響を与えるかを把握し予測するためのフレームワークです。PEST分析」は、経営学者のフィリップ・コトラー氏によって提唱されました。①「政治(Politics)」、②「経済(Economy)」、③「社会(Society)」、④「技術(Technology)」の4つの外部環境を、分析対象とします。①「Politics(政治的環境要因)」では、政治・法律・税制などの観点から、影響を及ぼす要因を分析します。具体的な分析項目としては、法規制や規制緩和、国の政策、税制の変更、政府の動向、市民団体の動向、外交関係の動向などが挙げられます。②「Economy(経済的環境要因)」では、経済動向の変化が自社に及ぼす影響を分析します。具体的な分析項目は、景気、インフレ・デフレの進行、為替、金利、経済成長率、日銀短観、失業率などです。③「Society(社会的環境要因)」では、消費者のライフスタイルに関する事項を分析します。具体的な分析項目としては、人口動態、世帯数、世論・社会の意識、教育、犯罪、環境、健康、文化に関する情報などです。④「Technology(技術的環境要因)」では、時代の変化に伴い開発される新たな技術が企業に与える要因を分析します。具体的な分析項目は、技術革新、特許、情報提供企業の投資動向などです。

分析により、どこまで市場の変化の予測が付くかは、未知数な部分はあります。例えば、今回のコロナ禍のように、予想もつかない環境変化が起きることもあります。技術革新により「破壊的イノベーション」が起き、従来の競合環境とは、まったく別の競争相手が出現することもあります。環境変化により、従来の市場が無くなることもあります。前職では、デジタル技術の進歩により、親会社のフィルムの市場が、あっという間になくなるのを見てきました。そして現代は、前職の会社のメインのビジネスの、2000年にわたる紙の文化が、終焉を迎えようとしていると感じています。紙の役割の1つは情報伝達です。情報の「作成、複製、伝達、保管、廃棄」に関わります。これらの役割が、デジタルの世界に置き換わりつつあります。デジタル技術は、従来の多くの仕事の縮小や廃業に繋がります。例えば、「紙の本」の出版のためには、簡単に考えても、植林と伐採の林業、工場に運ぶ運送業、パルプから紙を作る製紙業、印刷のためのインクなどを作る製造業、本を作る出版業、本を印刷する印刷業、販売するための書店の小売業など多くの職業の人たちがかかわっています。「デジタルの本」になった瞬間に、「出版業」以外の多くの仕事が必要無くなります。私は、マンションに住んでいますが、以前は、ごみ置き場の資源回収のところには「新聞紙の束」がありましたが、近年はありません。音楽も、「PCとソフト、作詞と作曲と歌」ができれば、自分で配信が出来ます。CDの作成や販売などで必要だった、多くの仕事はなくても音楽の配信は可能です。これが「破壊的イノベーション」の怖さです。

コトラー氏は「調査を行わずに市場参入を試みることは、目が見えないのに市場に参入しようとするようなもの」と述べています。しかし破壊的イノベーション」に対しては、初めての未知の状況が多いですから予測には限界がります。それでも、顕在化していなくても、水面下では何らかの変化の兆しがあることが大半です。可能な限り環境変化をつかんで、「変化対応」していくことで、生き残れる可能性が高くなります。

 

・主語を変える : 思考を「顧客視点」に変える一番簡単な方法は、主語を変えることです。自社のビジネスを考える時には、どうしても、自社が主語になります。自社と競合と比べたときに、「自社の優位性は?」「自社の劣っているところは?」「競合との価格の差は? 性能の差は?」などの視点で考えてしまいます。顧客中心に考える時には、主語を顧客にすることで、「お客様の課題は?」「お客様の期待は?」「お客様のお役にたてる点は?」「お客様が実現したいことは?」という視点で、考えることができます。顧客視点で考える質問項目は、お客様の言葉。お客様はどの様なことを言っていますか?②お客様の目線。お客様はどの様なことを考えていますか?お客様の期待。お客様はどの様なことを期待していますか?お客様の感動。お客様はどの様なことを喜びますか?お客様の評価。お客様はどの様な評価をしていますか?の5つの「顧客視点の質問」で自問自答して考えます。

 

・顧客起点と顧客視点 : 顧客起点と顧客視点の2つの表現がありますが、似たような意味に使われることもますが、意味に違いがあります。私の主観的も入っていますが、「顧客起点」の、「起点」とは、様々な物事が始まるところを意味する言葉です。スタート地点のイメージです。「顧客起点」は、自社のサービスや商品を顧客の立場から考えます。実際に起きている現実や事実に基づいて考えます。顧客が実際に取っている行動をデータとして分析を行うこともあります。論理的な分析とも言えます。

「顧客視点」の「視点」とは、物事について見たり考えたりする立場を指す言葉です。「顧客視点」は、顧客の気持ちになってサービスや商品について考えるという意味です。サービスや商品を利用、購入する場合に顧客がどのように感じるかを考えます。「顧客視点」は、顧客の気持ちや見方で考えるということです。感覚的な分析とも言えます。「顧客起点」は現実的な事実を基にしますが、「顧客視点」は顧客の感情を推測して考察します。「顧客起点」は、顧客の立ち位置から、事実に基づいて自社としてどう判断するか?を考える、論理的なアプローチになります。「顧客視点」は、もし自分が顧客だったらどう思うか?顧客の気持ちを推測する、情緒的なアプローチになります。

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