BtoBセールスの原理原則24 終わりに

ここまで、BtoBセールスの最も標準的なプロセスを書いてきました。あくまでも一般的なプロセスと手法ですので、自社の商品とサービスに合わせてカスタマイズすれば、使いやすいものになります。私の前職の会社は、元外資系の複写機メーカーでした。日本で初めて複写機をレンタル契約とコピー料金方式で販売していました。従来の日本にない、商品と販売方法です。当時は市場もありません。そのため営業力強化のために、営業プロセスや手法やトークを標準化しました。そして市場を広げていきました。自社の標準的な営業プロセスを定義していない会社は、営業プロセスを標準化すれば、当然、営業活動が効率的になり、営業パーソンのスキルのばらつきが最小化されますので、業績は上がります。ただし、大切な前提条件があります。それは、顧客にとって、あなたの会社が、信頼できるビジネスを行い。信頼できる商品品・サービスを提供し、そしてあなたが信頼できる営業パーソンであることです。そうでないなら、どんなにプロセス通りに活動しても、どんなにスキルを磨いても、所詮、付け焼刃です。継続的なビジネスにはなりません。当たり前のことですが、ビジネスはお客様の信頼があって初めて成り立ちます。
 自社の営業プロセスを定義して作成しても、それだけでは、営業力は向上しません。やはりトレーニングをする必要があります。ゴルフの本を読むだけで、スコアが良くなる人はいません。水泳の本を読むだけで、いきなり泳げるようになる人はいません。どんなに身体能力が高くて、才能のあるスポーツ選手でも、地道に地味な練習をしてきたから一流になれたのです。バブルのころから「効率化」の名のもとに、地道な作業や、すぐに成果の出ない努力をおろそかにする風潮になった気がします。営業プロセスを定義して、マニュアルを作成すれば、その通りに活動できると考えるのは、SFAを導入すれば、営業効率が上がると考えるのと同様に、楽天的です。SFAを導入して、使いこなしている企業は、10%以下のデータを見た記憶があります。
 SFAと同様の営業管理システムにCRMがあります。CRM(Customer Relationship Management)とは顧客関係管理のことで、「企業と顧客との関係性を管理する」もの指します。CRMに関して、アメリカの経営学者のコトラーは、「企業はCRMを先を争うようにして多額な資金を投じてきましたが、重要なデータがかなり欠けていることに気づきました。さらに問題なのは、そもそも社員の間に顧客志向が徹底していなかった点です。従来型の組織に、新しいテクノロジーを持ち込んでも、古い体質が変わるわけでもなく、資金をどぶに捨てるようなものです。」と述べています。
近年、営業力のある会社として「キーエンス」が注目されています。世に送り出す商品の約7割は世界初・業界初であり、売上高営業利益率50%の企業です。興味があり、ウェビナーに参加しました。ネットでも調べました。うろ覚えですが、ウェビナーでは「決して特別なことはしていません。当たり前のことを当たり前にしているだけです。」と言っていましたが、当たり前にやることが決まっているということです。そしてそれを実行していくことは決して簡単なことではありません。ウェビナーの説明では、キーエンスの強さは、①営業力+②商品開発力+③データ活用力と言っていました。①の営業力は、標準的な営業プロセスが定義されており、社内でロールプレーを頻繁に行っているようです。②の商品開発力は、お客様の困っていること。あったらいいなと思う要望を聞き出して、それを商品化しています。キーエースは、-ファブレス企業です。ファブレスとは、「Fabrication facility less」の略語で、文字通り製造工場(Fabrication facility)を持たない(less)という意味です。ですから、世界中から最適な商品を作れる企業に発注します。私はメーカーに勤めていましたが、メーカーでは自社の商品を売ることが最優先です。お客様の要望を聞いて、それを外部委託して商品化することは不可能です。従来の日本企業は、垂直統合が主流です。技術開発、生産、販売、サービス提供などの異なった業務を単一の企業(グループ)がすべて担うビジネスモデルです。グループ内だけで完結することが利点ではありますが、スピードとコストと開発力を考えたときに企業の弱点になる時代になりました。③のデータ活用力とは、顧客の情報や営業管理を、自社で開発したCRMで行っています。そして今はそれを外販もしています。キーエンスの強さは①②③がそろって生み出されています。③のCRMを導入すれば、営業力が強くなるわけではありません。
営業プロセスを定義するのは、作成すれば良いだけですので、それほど難しい作業ではありません。自社の営業プロセスを作ることの一番の障壁は、「そんなことに時間をかけるなら、とにかくお客様のところに行け」と命令する上司です。日本はバブルのころまでは、人口も増えており市場も拡大していましたが、今は急激な人口の減少と少子高齢化で、急速に市場が縮小しています。そして何より、グローバル競争時代になり、競争相手は、国内企業だけではなくなりました。世界中の企業が競争相手です。今の日本企業の一番のリスクは、頑張ればなんとかなった時代を経験してきた、上司と経営者です。営業に「勘と気合と経験と根性」は必要ないと否定しませんが、論理的で科学的な営業活動がますます必要になっています。SFAやCRMのシステムも必要ないと否定はしませんが、人の「考える力と創造力」がますます求められます。営業パーソンがソフトの指示通りに活動すればよいわけではありません。ソフトを利用するのは人間です。主体は人です。これからの時代では、生まれたときから、インターネットとスマホがあったZ世代が、新しいものを生み出してくれて、新しい日本を作ってくれるのではないかと、ものすごく期待しています。

※ 「BtoBセールスの原理原則」を「法人営業の原理原則」の冊子にまとめる作業をしています。1週間ぐらいで、HPにアップする予定です。使用する標準的なフレームワークもアップします。DLと転送は自由です。DLのための登録なども一切必要ありません。よろしければ、ご自由にお使いください。冊子にするにあたり、見落としていた誤字脱字は、気が付く範囲ですが修正しました。構成も若干分かりやすく変更しました。過去に書籍化した「PM流 法人営業の教科書」は書籍代が、1540円でしたが、今回は無料です。お得ではないでしょうか(笑)。エッセイを読んでいただいた皆様には感謝しています。ありがとうございます。少しでもお役に立てることを願っています。

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