プロ野球の故野村克也監督の有名な言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」があります。私の解釈は「勝つときには、なんで勝ったのか分からないで勝っこともあるが、負けたときは、負けるだけのはっきりした理由があって負けている。」です。これをビジネスに当てはめると、「どうして成功したのか分からないビジネスはあるが、失敗したビジネスには失敗するだけの理由(要因)がある。」ではないでしょうか。
私は「プロジェクトマネジメント」の研修やコンサルに20年携わっています。元所属していた会社で新規事業を立ち上げて、まあまあ上手くいったこともあれば、独立して仲間と立ち上げた会社が失敗して、3年で撤退したこともあります。今は仕事柄、色々な企業の新規事業のアドバイスをしたり、「プロジェクト計画書」の作成のお手伝いもしたりしています。そうした時に、なんとなく「このビジネスは厳しそうだな」と分かるようになりました。その時は、はっきり言えないことも多いですが、結果を見ると大体その感覚は当たります。
私のビジネスの失敗の一番の原因は、立ち上げた業種の経験不足と知識不足です。ビジネスモデルや事業計画がきちんとできていれば上手くいくと考えていました。考えが甘かったです。その業界のビジネスのやり方やルールも分かっていませんでした。市場と顧客の理解もできていませんでした。思いだけで何とかなると考えていました。今ならやらないか、もしくは、その業種の仕事を理解するために、その業種の会社にしばらく勤めてから始めます。例えば、ラーメン屋を始めるなら、ラーメン屋さんで修行してから始めます。
世の中には、私には、なぜうまくいったのかわからないビジネスがたくさんあります。例えば、TikTokやTwitter が、世の中に出たときに「いったい誰が使うのだろう?」と思いましたが、今では多くの若者たちが使っています。ドローンが出たときは、ラジコンのヘリコプターだと思いましたが、今では映像の世界で普及しています。将来は物流を担うかもしれません。最近は「メタバース」が話題になっています。私には、普及は難しいように感じていますが、どうなるのでしょうか。それでも、色々なビジネスの話を聞いていると、明らかにこのビジネスはうまくいかないだろうというのは分かります。
事業創出には、従来のビジネスから派生させる事業と従来の市場に全くなかった新しい商品やサービスの事業があります。従来のビジネスから派生させる事業が、1から10にするビジネスならば、まったく新しい事業は、0から1を生み出すビジネスです。難易度が高いのは、圧倒的に0から1を生み出すビジネスです、1と10の差は9ですが、0と1の差は無限大です。これから先、AIや量子コンピーターなどの多くのテクノロジーの進歩により、続々と新規事業が世の中に出てきます。新しいテクノロジーを利用する分野では、従来の経験や知識が役立たない、もしくは邪魔になることさえあります。そうなると、新しい知識を柔軟に吸収できる若者たちにアドバンテージがあります。それでもこうした新規事業を立ち上げる時には、市場を判断するマーケティングの知識は必要です。
最近特に感じていることが有ります。発展する企業のトップは、多くの優れた知識と能力を持っていますが、特に優れているのは、マーケティングの知識と能力だと思っています。例えば、スティーブ・ジョブスやジェフ・ベソスやイーロン・マスクはマーケッターとしても超一流です。日本でも、ユニクロの柳井社長や星野リゾートの星野社長やリクルートの出木場社長は、マーケッティングの能力が卓越しています。これからの企業のトップは、マーケティングの知識と能力が求められます。
新規事業や新分野へのビジネスの多くは、プロジェクトとして進められます。プロジェクトを立ち上げるときの、必要な情報に「戦略計画」や「市場分析」があります。「どうゆう目的で、何を作り出すのか」が明確になって、初めてプロジェクトが立ち上がります。プロジェクトの立ち上げにも、マーケティングの知識と能力が必要です。
ドラッカーは「企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。」と言っています。キーエンスやユニクロのようにファブレス企業として製造部門を持たない企業も増えています。総務や経理や人事機能や営業機能さえもアウトソースしている企業もあります。これからの時代は、既存のビジネスでも新規のビジネスでもマーケティング抜きでの事業はありえません。
私は、「プロジェクトマネジメント研修」の前段階の研修として、「事業の実現可能性研修」を実施しています。今回は、基本的なマーケティングの理解のために「事業の実現可能性研修」をベースとして書こうと思っています。特にビジネス経験の少ない若い方が、新規事業を考える時の参考に少しでもなれば嬉しいと考えています。
