毎年年末に「今年の流行語大賞」が発表されます。今年一年でテレビや生活の中で流行った言葉です。一時の流行で終わるものが大部分ですが、長い間残るものもあります。ビジネスの世界でも、その時々の流行語があります。DXとSDGsは近頃は頻繁に目にします。DXは、前はデジタルトランスフォーメーションの略語のように使われていましたが、今はDX(ディエックス)と言われています。コロナ禍の時に、よく使われていたビジネス用語は、リモートワークとインサイドセールスだと感じています。コロナの収束に伴いこの後どれぐらいの頻度で使われ、残るのか興味あります。
最近よく目にするビジネス用語は、「心理的安全性(psychological safety)」です。「心理的安全性」とは組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。組織行動学を研究するハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した心理学用語です。Googleが2012年から約4年間をかけて、成功し続けるチームに必要な条件を探るプロジェクトで、社内の数百に及ぶチームを分析対象として、より生産性の高い働き方をしているのはどのようなチームなのかを調査しました。その結果、「心理的安全性」の高いチームのメンバーは、離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイディアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が2倍多い」ということで一躍注目を集めました。
心理的安全性を高める4つの因子が定義されています。①話しやすさの因子。言いにくい事でも言える。なんでも相談できる。コミュニケーションを図りやすいチームであること。②助け合い因子。個々のメンバーが競い合うライバルではなく、苦手なことは頼り会う。協働・共創の風土があること。③挑戦因子。挑戦を認める、褒める。前向きにチャレンジしていく雰囲気があること。④新奇歓迎因子。新しい視点を取り入れる。今までの自分たちとは異なる価値観やスキル、やり方を取り入れていくことです。4つの因子があれば成果が出るのは、「それはそうでしょ。」と思います。今、私が「心理的安全性」が高い組織として真っ先に思い浮かぶのは、「WBCの栗山ジャパン」です。全選手、明るいな雰囲気の中、楽しそうに野球をしていました。上下のわだかまりもなく、話しやすそうですし、前向きで、全員でチャレンジをしている良い雰囲気を感じました。「WBCの栗山ジャパン」の優勝は、日本中に、勇気と感動と元気を与えてくれました。多くの経済効果を、もたらしてくれていますが、私が思う一番の経済効果は、長年、日本中に経済の停滞感が蔓延して、自信を失っている日本人に、自信と元気を与えてくれたことです。これから、日本が復活しいていく予感を与えてくれました。
心理的安全性が低くなる原因として、4つの不安が挙げられています。①無知だと思われる不安(Ignorant)。質問や確認をしたくても「こんなことも知らないのかと思われないか」という不安。②無能だと思われる不安(Incompetent)。ミスや失敗した時に「仕事ができないと思われるのではないか」という不安。③邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)。自分が発言することで「話の邪魔をしていると思われないか」という不安。④ネガティブだと思われる不安(Negative)。改善を提案したくても「他の人の意見を批判していると否定的に捉えられるのではないか」という不安。
エドモンドソン教授は、心理的安全性をスコア化する方法として7つの質問を提唱しています。Q1. チームのなかでミスをすると、たいてい非難される。Q2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。Q3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。Q4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。Q5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。Q6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。Q7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。そもそも、組織でこうした質問ができるかどうかどうかと言う問題があります。もし、できるのであれば、「心理的安全性」の高い組織ではないでしょうか。現実には、このような質問ができない組織の方が多い気がします。
心理的安全性への誤解として、心理的安全性の高い職場は、居心地が良くて、ぬるま湯のような組織という訳ではありません。あくまでも組織の生産性アップに必要な一要素です。メンバー全員が、高い目的と目標を共有していることが前提です。仕事に対して責任と挑戦の気持ちが必要です。エドモンドソン教授の著書「チームが機能することはどういうことか」の中で、生産性の高いチームには、「心理的安全性」と共に「内発的動機付け」が必要だとしています。「内発的動機」とは、物事に対する強い興味や探求心など「人の内面的な要因によって生まれる」動機付けのことです。「内発的動機」は、仕事に対する興味や関心、そこから生まれるやりがいや達成感などといった自分自身の内からなる動機により行動に結びつきます。組織の状態を、「心理的安全性が高い・低い」と「内発的動機が高い・低い」の4分割でマトリックス分析をしています。①心理的安全性が高い×内発的動機が高い)=学習・自立成長職場。②(心理的安全性が高い×内発的動機が低い=快適・仲良し職場。③心理的安全性が低い×内発的動機が高い=不安・ギスギス職場③心理的安全性が低い×内発的動機が低い= 無気力・形式的、非効率職場。に分類されています。「WBCの栗山ジャパン」は、「心理的安全性」も「内発的動機」も高い組織の典型です。こんな組織が作れたら理想的です。
