事業創出の原理原則2 マーケティング機能

・マーケティングの定義 : 定義は様々ですが、日本マーケティング協会(1990年)では、「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」としています。なんのことか分かりづらいです。簡単に表現すると「商品・サービスが売れる仕組みを作る活動」と私は教わりました。マーケティングは、市場調査や販売予測や広告宣伝が主な活動だととらえていました。販売のサポート機能と考えてきました。

最近は、定義が拡大されています。アメリカの経済学者のコトラーは、「どのような価値を提供すれば、ターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生みだし、顧客にとどけ、そこから利益を上げること」と定義しています。マーケティングの役割は、商品やサービスなどの「価値」を顧客に「いかに売り込むか」を問うものではなく、「価値」を生み出すものになっています。

顧客のニーズを十分に理解することにより、そのニーズを満たすことができる価値を創造し、「売り込みをしなくても自然に売れてしまう状態を作ること」がマーケティングの役割だと考えられるようになっています。マーケティングは、商品開発や営業部門も管轄範囲です。どのようなものを作り、どう売っていくかという、企業活動全般に関わります。CMO(Chief Marketing Officer/チーフマーケティングオフィサー)「最高マーケティング責任者」の言葉も見るようになりました。マーケティングの役割が拡大しています。

作ったものをどう売るのかでなく、売れるものをどう作るかを考えるのが役割です

・戦略と戦術 : 戦略とは「特定の目的を達成するため、大局的な視点で組織行動を計画し遂行する方策、通則」という意味です。戦術とは「具体的な作戦や任務達成のための具体的方法」という意味です。 戦略戦術の上位概念です。ビジネスにおける戦略とは、「企業が持続的な成長を目指すための方向性や考え方」を意味しています。企業理念を実現するためのシナリオです。ビジネスにおける戦術とは、「戦略を実現させる手段で、アクションプランやタスクとも言い換えられます」。マーケティングは、戦術作成のためのツールとして考えられてきましたが、今では、戦略の策定でもマーケティングが必要だと考えられるようになっています。

 毛沢東の言葉として、「私の、戦略は小を以て大を制する。戦術は大を以て小を制する。」を読んだ記憶があります。意味は、中国革命の時に国民政府軍との戦力差は、圧倒的に不利でしたので、戦略は、少数でもどうやって多くの軍と戦うかを考える。そして戦術は、局面において、いかに国民政府軍より、兵力を有利にして戦っていくかです。分かりやす戦略と戦術の説明です。「ランチェスターの弱者の5大戦略」を実践しています。毛沢東は戦略家としてもマーケッターとしても優秀です。ビジネスで考えれば「市場分析」や「競合分析」は必ず必要です。

・価格戦略と商品戦略 : 商品の価格や性能を決めるのもマーケティングの役割です。5つの基本的な考え方があります。①コストベース。②競合ベース。③顧客ベース。④シェアベース。⑤ブランドベースです。通常は①②③です。①のコストベースは、価格や性能を、必要な原価やその他経費の販管費などと期待する利益から考えます。②の競合ベースは、対競争相手と比較して、いくらだったら有利か、どのような性能があれば差別化できるかを考えます。③の顧客ベースは、顧客視点で考えたときに、いくらなら魅力を感じる価格か、どのような性能があれば満足してもらえるかを考えます。①は、シェアの高いメーカーの考え方です。②は、2番手以降のメーカーの差別化の戦略です。③は、顧客視点に立って価格や性能を決定します。アイリスオーヤマやワークマンなど伸びている会社はこの戦略をとっています。④⑤は少し特殊です。④シェアベースは、競合を排除できる価格や性能を考えます。マーケティングには、「先行者利益」という考え方があります。いち早く市場に商品を投入できたメーカーは、最初は企業の有利な価格で販売でき、利益率の高いビジネスができるということです。しかしこのやり方ですと、直ぐに競合が参入して価格競争になります。日本のディスプレー業界が失敗事例です。いち早く参入できた場合、企業は後から参入する企業の参入障壁を高くするため、最初は価格や性能を利益度外視してでも販売して、シェアを押さえて、やがて市場が本格的に拡大してから利益を得ようとするやり方です。Amazonのベソスは、「Amazonのビジネスモデルは誰でも参入可能なもので特別なものでない」と言っていました。Amazonは、利益をシステム構築や施設になどに投入して、ECではほとんど利益を出ていませんし、配当もしていません。利益はAWSで出しています。今からAmazonを追いかけるのは至難の業です。日本電産は、電気自動車のインバーター一体型のモーターを赤字で販売しているというニュースを見ました。⑤ブランドベースは、ブランドイメージを構築できる価格や性能を考えます。価格と性能の設定は特殊です。コロナ前のインバンドで人があふれていた銀座で、開店前に一番人が並んでいたお店は、エルメスのお店でした。なぜかというと日本の正規のお店で買えばコピー商品の心配がないからだそうです。個人的には、バックの価格が何百万円もするのは理解できません。たぶんコピー商品でも、デザインと品質は区別がつかないレベルだと思います。人は何百万円もするバックを買っているのではなくて、「そんな高価なバックを持てる自分に対する満足感」を買っています。高価な時計や高価な自動車を欲しがる気持ちも同じです。だから本物が欲しいのです。一目でブランドがわかることも重要です。銀座の一等地の豪華な店で、美談美女が販売していることもブランド価値に繋がっています。仮に同じものを両国のスパーで私が販売していたら、絶対にだれも買ってくれません。以前、ヴィトンを販売しているLVMH (モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のCEOが「この会社の一番の資産価値は、ブランドを維持して発展させる力だ」と言っているインタビュー記事を見ました。ブランドの構築は至難の業です。近年、日本でブランドの構築に一番成功したのはトヨタ自動車の「レクサス」だと思います。レクサス販売の時には、車好きの友人はみんな「失敗する」と言っていましたが、今ではブランドが確立して大成功しています。レクサスがない時は、上位の車を欲しい人は、ベンツやBMWを買いましたが、今では多くの人がレクサスに乗っています。ブランディングはマーケティングの一部です。たぶん優秀なマーケッターがいたのだと想像しています。

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